定年後の暮らしを支える退職金。住宅ローンの完済や老後資金として頼りにする人は多いはずです。しかし、会社の制度改定により、長年思い描いていた受取額が大きく変わってしまうケースも少なくありません。自社の規程を把握しないまま定年直前を迎えると、一体どんな落とし穴が待っているのか。退職金を巡る想定外の現実を考えます。
〈月収45万円・55歳会社員〉が激怒…定年目前の面談で発覚した「退職金600万円減額」という想定外の現実 ※写真はイメージです/PIXTA

定年後の収入まで見通せない会社員の不安

佐藤さんを悩ませているのは、退職金だけではありません。

 

60歳以降は再雇用制度を利用して働き続けるつもりですが、会社から示されている給与水準は現役時代の半分程度です。

 

「退職金は減る、給料も下がる。それでも住宅ローンや生活費は待ってくれません。60歳になったら、今よりずっと厳しい生活になるんじゃないかと思います」

 

佐藤さんの妻はパート勤務で、夫婦の収入を合わせて家計を維持しています。次男の大学進学を控え、これから数年間は教育費の負担も重くなります。退職金を老後資金として残す余裕がなくなれば、再雇用後の収入から生活費を捻出しなければなりません。

 

「今から転職したところで、55歳の私に今と同じ給料を払ってくれる会社があるとは思えません。結局、定年までここで働くしかない。でも、会社を信頼して働き続けられるかといえば、正直、難しいですね」

 

定年まで勤め上げれば、退職金と年金で老後の生活を支えられる――かつては、そうした見通しを立てる会社員も少なくありませんでした。しかし、退職金制度は企業ごとに異なり、勤続年数や役職、評価、給与など、算定方法もさまざまです。制度の変更があれば、将来受け取る金額も変わる可能性があります。

 

「もっと早く確認しておけばよかった」――そう佐藤さんは振り返ります。

 

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は74.9%。同調査における「大学・大学院卒(管理・事務・技術職)」の定年退職者(勤続20年以上かつ45歳以上)の1人平均退職給付額は1,896万円(勤続35年以上では2,037万円)です。

 

多くの企業で従来型の勤続年数重視の仕組みから、役職や成果に応じたポイント制などへの見直しが進んでおり、受け取り見込額が想定と大きく異なるケースは珍しくありません。定年直前で慌てないためにも、早いうちから自社の退職金規程や算定方法の改定状況を確認し、現実的なマネープランを検討しておくことが大切です。