東京23区を中心に世帯年収1,000万円超の共働き家庭が増加する一方、慢性的な時間不足による子どもの孤食や家庭ケアの機能不全が顕在化しています。事例を見ていきましょう。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
「お願い、仕事を辞めてくれ…」都内在住・年収600万円の36歳妻、年収650万円の38歳夫から告げられた「ひと言」で下した決断 (※写真はイメージです/PIXTA)

都市部共働き世帯が直面する「時間貧困」と「子どもの孤食」

首都圏における子育て世帯の所得水準を俯瞰すると、共働きによって世帯年収1,000万円の大台を達成する家庭は決して少ない数ではありません。ニッセイ基礎研究所が公表した分析レポート(2025年1月)が引用する総務省統計局『令和4年就業構造基本調査』のデータによると、東京23区に暮らす「夫婦と子から成る世帯(全57万4,200世帯)」のうち、世帯年収1,000万円以上は56.2%(32万2,800世帯)と半数を超えています。さらに、妻が正社員として就業している世帯に限定すると、その割合は69.7%と約7割にまで達します。

 

しかし、この堅調な経済基盤は、夫婦双方が責任ある立場でフルタイム労働を担い、長距離の通勤や日常的な残業に多くの時間を割くことで辛うじて維持されているケースが少なくありません。

 

その結果として生じるのが、十分な収入がありながら生活時間が慢性的に枯渇する「時間貧困」の現象です。保育園時代の手厚い延長保育や時短勤務の恩恵が切れる「小1の壁」「小2の壁」に直面した際、民間学童の利用や食事のデリバリー、週末の作り置きといった外注・効率化策を講じることは可能です。しかし、それらは物理的な安全や空腹を満たす手段にはなっても、「家族揃って食卓を囲む温かさ」や情緒的な安心感までを完全に代替することはできません。

 

また、地方から都市部へ流入した現役世代においては、近隣に育児を支えてくれる親族がおらず、地域の共同体とのつながりも希薄になりがちです。社会的な受け皿が限定的な環境下でトラブルや子どものSOSが発生した際、その調整弁として夫婦のどちらか一方――とりわけ母親側のキャリア中断やダウンシフトが選択されやすい構図は依然として根強く残っています。

 

共働き家庭の持続性を保つためには、個々の家庭における精神論や一方の自己犠牲に依存するのではなく、柔軟なテレワークの定着や残業抑制といった企業の労務環境の見直し、さらには学校終了後の居場所づくりなど、社会全体で子どもの生活時間を支える仕組みの再構築が求められているのではないでしょうか。

 

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