(※写真はイメージです/PIXTA)
肩書きのない職場で見つけた新しい居場所
倉庫に通ううちに、マサシさんは若いスタッフたちともすっかり顔なじみになりました。忙しいときにはお互いに声をかけ合い、休憩時間には冗談を言い合うこともあります。
「食品メーカー時代には役職で呼ばれることも多かったんですが、ここでは過去の肩書きも年収も関係ありません。最初は若い人に仕事を教えてもらうのが新鮮でしたね」
作業に慣れてくると、周囲の状況を見ながら率先して動くようになり、若いスタッフから頼りにされることも増えました。
「仕事ができなければ迷惑をかけるし、できれば喜んでもらえる。単純なんですよね。若い人に教えてもらうこともたくさんありますし、私が役に立てることもある。そういうのが楽しいんです」
現在は関連企業での仕事に加え、月に4~5回ほど倉庫のアルバイトに入っています。仮に時給1,400円で1日8時間、月5日働けば、収入は5万6,000円。生活費を稼ぐ必要はありませんが、自分の身体を動かして得たお金には、また違った喜びがあるといいます。
「別にお金が欲しくてやっているわけじゃないんです。でも、働いた分だけお金をもらえるのはうれしいですよ。最近は稼いだお金で子どもたちや元妻と久しぶりに食事をしました。『あなた、前より楽しそうね』と元妻に言われました」
仕事を終えた日は、帰宅してシャワーを浴び、冷えたビールを飲むのが楽しみになりました。
「次の日は筋肉痛になることもありますけどね。でも、家で何もしないで過ごすより、ずっといい。まだ自分にもできることがあるんだなと思えます」
お金のためだけではない、シニアの働き方
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査」によると、収入を伴う仕事をしている人が働く主な理由は、「収入のため」が55.1%と最も多くなっています。一方、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」が20.1%、「自分の知識・能力を生かせるから」が12.4%と、経済的な理由以外で働く人もいます。
マサシさんの場合、経済的には働かなくても暮らしていけます。それでも、週2日の仕事だけでは得られなかった充実感を、倉庫のアルバイトで感じるようになりました。
定年退職や離婚などを経て、それまで当たり前だった人間関係や生活のリズムが変わることがあります。十分な年金や貯蓄があっても、それだけで日々の充実感まで保証されるわけではありません。
「いつまで続けられるかわかりませんけど、身体が動くうちは行きたいですね。あそこに行けば、みんながいるんで」
現役時代とは異なる環境で、新しい人間関係を築き、自分の役割を見つけたマサシさん。時給1,400円の単発アルバイトは、収入以上のものをもたらしたようです。
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