順調にキャリアを重ね、高年収を維持してきた会社員であっても、50代は役職や給与の急変という思わぬ転機が訪れやすい時期です。待遇の見直しは家計のみならず、定年後の働き方や人生設計全体を大きく揺るがします。ある大手管理職に起きた人事の事例を手がかりに、キャリア後半期に直面する現実と必要な備えを考えます。
「ふざけるな!」〈年収1,400万円・54歳大手メーカー部長〉月曜朝の人事面談で告げられた「部長職からの退任」…年収450万円減の現実 ※写真はイメージです/PIXTA

年収1,000万円超でも安心できない、50代の家計

田中さんは、翌週の月曜日から出社時間を変えました。これまで部長として参加していた会議の一部は、後任に引き継がれています。部下からの相談も減りました。仕事がなくなったわけではありませんが、会社での役割が変わったことを日々実感するようになったといいます。

 

そして、役職が変わってから、初めての給料日。明細をみて呆然としたといいます。

 

「月額で30万円減っていました。わかっていたとはいえ、ショックでしたね」

 

田中さんの会社では、60歳で定年。再雇用を希望すると、絶対ではありませんが、70歳まで働くことができます。多くの先輩社員は、再雇用を選択し、今も活躍しているといいます。しかし、今回の処遇変更により、田中さんは定年後の働き方を考えるようになりました。

 

「今回、自身の人事を考えると、定年以降もやりたい仕事ができるか、疑問です」

 

管理職になってから、何よりも仕事を優先してきました。休日も、体を休めること以外、特にすることもない――そんな自分が、定年後とはいえ、仕事にやりがい以外の何かを見つけられるか、不安になったそうです。

 

また給与についても不安が残ります。定年を機に契約社員になります。給与は通常で3割ほど減り、定年前に役職についていれば、さらに減ります。昔、お世話になった上司は再雇用後、「給料が7割減だ」と自虐的に笑っていました。

 

「外に活路を見出すことも、選択肢のひとつに入れないといけませんね……」

 

役職交代や大幅な減収に伴う将来不安は、多くの50代会社員が直面する現実です。

 

内閣府『令和7年度 高齢社会対策総合調査(第10回)』によると、日本の60歳以上で「収入を伴う仕事をしたい(続けたい)」と回答した人は46.1%と欧米諸国より高く、理由として「収入がほしいから」を挙げた人は53.8%に上ります。また、老後の貯蓄や資産について「まったく足りないと思う」人は28.9%に達しており、経済的背景が強い就労動機となっていることが窺えます。

 

定年後を見据え、50代のうちから家計収支の見直しと、長期的なマネープランや新たな働き方の再設計を進めることが求められます。