高齢期の住み替え先として、郊外の一戸建てから利便性の高い集合住宅を選ぶ動きが広がっています。終の棲家には老人ホームや平屋が選ばれがちですが、都市部のタワーマンションという選択肢に注目するシニア世帯も少なくありません。世間の先入観とは異なる、高齢期における住まいの新たな合理性と実態を詳しく検証します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「年寄りが見栄を張るな!」〈年金月29万円・貯金4,000万円〉70代夫婦、郊外の庭付き一軒家を手放し「駅前タワマン」へ。親族一同が呆れた決断の「3年後」 ※写真はイメージです/PIXTA

「老後破綻」どころか手元に残った月6万円の余裕

親族の反対を押し切り、加藤さん夫妻は戸建てを売却して駅直結のタワーマンションの「4階」を購入しました。移住から3年が経過した現在、あえて低層階を選んだ点に、加藤さんの冷静な計算がありました。

 

「目的は眺望ではなく、駅直結の利便性と建物の堅牢さです。4階なら停電時も階段で上り下りできます。各フロアに24時間出せるゴミ置場があり、重いゴミ袋を運ぶ負担も消えました」

 

気密性と断熱性に優れた室内は冬でも室温が下がりません。内廊下設計で急激な寒暖差もなく、ヒートショックの懸念も解消されました。さらに想定外だったのは「生活費の好転」でした。

 

「戸建て時代は車の維持に月4万5,000円、修繕積立に月3万円、光熱費に2万5,000円かかっていました。車を手放し、光熱費も半減しました。管理費と修繕積立金は月3万5,000円ですが、毎月の固定支出は以前より約6万円減ったのです」

 

総務省の『家計調査報告(家計収支編)』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における消費支出は月額合計26万3,979円。そのうち「交通・通信」費は月3万1,325円です。加藤さんの場合、駅チカに住み替えたことで、その多くがなくなりました。移動にかかる金銭的・身体的負担の軽減に加え、商業施設や医療機関へのアクセス向上により、生活満足度は大きく向上したといいます。

 

また住み替えたタワーマンションは24時間体制の防災センターがあり、夜間も警備員が常駐。「防犯面でも安心なのは、高齢の私たちにとってはありがたい限り」と強調します。

 

世間の先入観に惑わされず、生活機能と安全性を冷静に見極めた住み替えは、経済的な余裕と安心をもたらすこともあるようです。