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妻の昇進を喜んだ夫、半年後に変わった家事の分担
「妻が先に管理職になりました。もちろん、昇進そのものはうれしかったんです。ただ、家のことまでこんなに変わるとは思っていませんでした」
東京都内のメーカーに勤める伊藤大輔さん(42歳・仮名)は、そう話します。妻の美穂さん(40歳・仮名)とは、結婚して10年。共働きで、子どもは小学生の長男と長女の2人です。
大輔さんの月収は45万円。主任として部下の指導にも携わり、仕事に不満があるわけではありません。一方、美穂さんは同じく会社員として働き、以前から仕事への評価が高い人でした。
転機は、美穂さんが課長職への昇進を打診されたことです。
「大変だろうけれど、せっかくのチャンスだから受けたほうがいいよ」
大輔さんはそう背中を押しました。自分より先に管理職になることに、抵抗がなかったといえば嘘になるものの、妻の努力が認められたことを素直に喜びたい気持ちのほうが強かったといいます。
昇進後、美穂さんの給与は上がりました。しかし、仕事の責任も重くなります。会議や部下との面談が増え、帰宅時間は以前より遅くなりました。取引先との会食が入る日もあります。
それまで夕食の準備は美穂さんが担当し、大輔さんは食器洗いや休日の買い出しを受け持つことが多かったそうです。子どもの学校行事や習い事の送迎についても、妻が予定を確認し、必要に応じて夫に頼む形でした。
ところが、昇進後はそうはいかなくなりました。
「今日は帰りが遅くなるから、子どもたちの夕飯をお願いできる?」
美穂さんから連絡が入ると、大輔さんは仕事を切り上げ、学童保育に長男と長女を迎えに行きます。帰宅後は夕食を用意し、洗濯物を取り込み、翌日の学校の準備を確認します。以前なら妻が担っていた仕事が、少しずつ夫に回ってくるようになりました。
もちろん、家事や育児を夫婦で分担すること自体に異論はありません。大輔さんも、妻だけに負担をかけるつもりはなかったといいます。
ただ、問題は分担の仕方でした。
美穂さんの帰宅が遅い日は、大輔さんが仕事を調整する。学校から連絡があれば、まず夫が対応できるかを考える。週末の予定も、妻の仕事が入るかどうかを確認してから決めるようになりました。
「気づいたら、私が調整するのが当たり前になっていたんです」
大輔さんは、自分の仕事も責任ある立場に近づいていると感じていました。上司から新しい業務を任される機会も増えています。けれど、家庭の事情を理由に仕事を断ることには、ためらいがありました。
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査(2022年調査)』によると、妻の1日の平均家事時間は平日247分(4時間7分)に対し、夫は平日47分にとどまります。夫婦全体の家事量を100とした場合の分担割合は妻が8割以上を占めており、妻が正規雇用として働く家庭であっても、約5割の世帯で妻が家事の80%以上を担っています。また、育児の分担割合についても妻が78.0%、夫が22.0%と、依然として家庭内の負担は妻側に大きく偏っているのが現状です。