(※写真はイメージです/PIXTA)
「内定取り消しになるかもしれない」卒業直前の息子から届いた悲痛な電話
卒業に向けてラストスパートをかけているものと信じて疑わなかった、祝杯から数ヵ月後のことです。Aさんのスマホに息子から電話が。
「内定取り消しになったらどうしよう」
切羽詰まった息子の声に、Aさんはすぐにはなにが起きたのかわかりませんでした。「落ち着いて話してみなさい」と促します。
重い口を開いた息子が語った内容は、耳を疑うような話でした。
単位の取得も無事に目処が立ち、あとは卒業を待つのみだったことから、サークル仲間と「みんなで卒業旅行に海外へ行こう」という計画が持ち上がったといいます。旅行資金を稼ぐため、短期のアルバイトがないかと探していたところ、サークル仲間の一人が「人手が足りない現場があるから、一緒にやらないか」と話を持ちかけてきました。
息子を含めたサークルのうちの何人かは、友人の紹介だったため、疑うことなくその日雇いバイトに参加したのです。仕事内容は荷物を受け取って運ぶだけというごく簡単なものでした。息子たちは、最近流行りのスキマバイト感覚で手軽に引き受けてしまったと打ち明けます。
ところが数日後、事態は急転。そのアルバイトを紹介してきたサークル仲間が、実は闇バイトに加担していた事実が発覚したのです。一緒にバイトをした学生たちもみんな青ざめているといいます。息子をはじめ、アルバイトをした子はみんな疑いもしなかったとのこと。「まさか、こんなことになるなんて」と息子はいまにも泣き出しそうです。
電話口で事の顛末を聞かされたAさんは、激怒しました。
「お前は、どうしようもないバカだ! ニュースでお前だって見たことがあっただろう! 確認もしないでバイトをしてしまうなんて、本当にバカだ」
内定も決まり、社会人としての心構えとして社会的責任等、十分に理解していたと信じていた息子。最低限の確認すらせずに怪しい話へ乗ってしまった軽率さに失望します。息子自身も「本当に闇バイトに加担してしまったのではないか」という恐怖に苛まれ、アパートの部屋に引きこもって震えているようです。
Aさんは衝撃を受けながらも、居ても立ってもいられず、急いで上京し、息子のもとへ向かいます。憔悴しきった息子とともに当時の状況や連絡の履歴を詳しく精査・確認した結果、息子が引き受けた運搬業務そのものは、闇バイトに加担したものではなかったことが判明しました。
ひとまずは安堵したものの、働くうえでの最低限の契約等を確認しなかった息子には、「事件に関わっていなかったからよかった」では済まされないことをよく言い聞かせました。
働くこと、そして契約を結んで対価を得ることは、法的な義務と社会的責任を負う行為です。目先の小遣い稼ぎのために安易な判断を下せば、積み上げてきた学業の成果や将来の収入基盤を一瞬で失いかねません。お金を稼ぐことの重みと社会的信用の価値を理解することは、社会へ踏み出す第一歩であり、これから自立を迎えるどの家庭にとっても決して他人事ではない重要な教訓です。
三藤 桂子
合同会社ミコサポ
代表
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