新NISAの普及に伴い、スマートフォン一つで手軽に資産管理ができる時代になりました。しかしその利便性の裏で、証券口座を狙った不正アクセスや不正取引のリスクは年々深刻化しています。2026年10月には、Webサービスの土台として世界中で広く使われるプログラミング言語「PHP」において、非常に重大な脆弱性(PHP2shell等)への注意喚起が公表されました。いまや投資家に求められるのは、資産を増やす知識だけではありません。資産を守る知識もまた、欠かせない時代になっています。――ある日突然、身に覚えのないログイン通知とパスワード変更に直面した38歳会社員の事例を通して、個人でできる具体的な防衛策と、国が進める「能動的サイバー防御(ACD)」の最新動向について、経済産業省・高度情報処理技術者である川淵ゆかりFPが解説します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
NISAで満額投資していた38歳独身会社員、資産は「1,200万円」に増えたが…毎日見ていたスマホの残高画面が一変。ある日の“ログイン”に血の気が引いたワケ【経済産業省 高度情報処理技術者が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

38歳独身会社員を襲った口座異変

38歳で独身の会社員Aさんは、新NISAの非課税枠をほぼ使い切るなど、将来に備えた資産形成を着実に進めていました。NISAの口座残高は1,200万円。

 

仕事での大幅な収入増は見込みにくく、結婚を急いでいるわけでもありません。だからこそ、毎月の積立と、アプリに表示される資産残高の伸びだけは、裏切らない手応えのように感じていました。

 

ですがその安心は、ある朝あっけなく崩れました。

 

スマートフォンに届いたのは、身に覚えのないログイン通知。さらにその直後、追い打ちをかけるように「パスワード変更完了」のメールまで届いたのです。

 

慌てて証券口座アプリを開こうとしても、すでにロックがかかっていて入れません。ようやくサポート経由で確認できた画面には、見覚えのない取引履歴が残されていました。

 

Aさんは不正ログインの可能性に気づきましたが、ネット通販をはじめ複数のサービスで同じパスワードを使い回していたため、どこから認証情報が漏れたのか見当もつきません。なにを先に疑えばいいのかもわからず、ただ立ち尽くしてしまいました。

 

「どこから漏れたのかわからない」という恐怖は、証券口座の被害だけでは終わりません。「連携している資産管理アプリも見られているのではないか」「登録先のメールアドレスや個人情報も危ないのではないか」そんな不安が次々に浮かび、確認すべき範囲は際限なく広がっていきます。

 

便利さのために続けていたパスワードの使い回しは、被害を広げやすい状態を作っていただけでなく、不安そのものも大きくしていたのです。

 

資産を脅かすリスクは、利用者の手元だけにあるとは限りません。サービスの裏側で動くシステムやソフトウェアの弱点が、思わぬ不安の火種になることもあります。