(※写真はイメージです/PIXTA)
義父の誘いで行った外食での一幕
「孫に会いたいといって自分から店を指定しておきながら、レジの前であれはないです」
都内の企業で時短勤務をしながら、2歳年下の夫と小学生の子ども2人を育てる千夏さん(38歳)。共働きで、夫のほうが年下ということもあり、年収は千夏さんのほうが高く、ペアローンを組んだマイホームの返済額の負担割合も千夏さんのほうが多いです。
日々の教育費や住宅ローンを計画的にやりくりしている千夏さんにとって、どうしても受け入れられないトラウマとなった出来事があります。それは、電車で1時間ほどの郊外に住む義父・進さん(66歳)との外食での一幕でした。
進さんは半年前に定年退職し、現在は無職。同い年の義母と2人で年金生活を送っています。現役時代はバリバリ稼いでいたようで、外面がよく、親族の前では見栄を張った振る舞いが目立つ人です。
ある週末、進さんから「久しぶりに孫たちの顔が見たい。美味いものを食べに連れていってやる」と誘いがありました。進さんが指定したのは、義実家の近所で評判という最近できた個室焼肉店。義父母、千夏さん夫婦、子ども2人の計6人で訪れました。
テーブル席につくや否や、進さんは「好きなものを遠慮なく頼め」と孫たちに上機嫌で声をかけ、特上カルビや上タン塩、サイドメニューやビールを次々と注文。デザートまで頼み、普段、外食は極力控えているため孫たちも大喜び。賑やかな宴席となりました。
食事が終わり、合計金額が書かれた伝票がテーブルに置かれます。伝票に記載された金額は、6人で5万1,400円でした。
進さんは伝票を一瞥すると、急に押し黙り、財布を出すそぶりすら見せません。夫も気まずそうに目を逸らすなか、千夏さんが仕方なくバッグから財布を取り出そうとしたそのときでした。
進さんが千夏さんの正面に回り込み、千夏さんの両手を自らの両手でぎゅっと包み込むように握りしめてきたのです。
「千夏ちゃん、悪いけどここ、払っておいてくれないか? なぁに、水臭いこというなよ、俺たち『家族』じゃないか!」
顔を近づけ、カサカサと乾燥した手で千夏さんの手を強く握りながら、満面の笑みで支払いを丸投げしてきた進さん。自ら「連れていってやる」と見栄を張って高額な注文を重ねておきながら、支払いの段になると嫁の金銭をあてにし、あまつさえ「家族」という言葉で擦り寄ってくる姿に、千夏さんは激しい嫌悪感を覚えました。
「ごちそうする気が最初からなかったことにも腹が立ちましたが、なにより『家族なんだから』という図々しさに反吐が出ました。帰り道で夫にその怒りをぶつけても『親父も年金生活で余裕がないんだから、それくらい出してやれよ』とヘラヘラ笑うばかり。なんだかな、という気持ちです」
義父とはもともとそりが合わないとは思っていたものの、その日以来、千夏さんは義理の実家との外食の際には、自ら店を決め、初めから自ら支払うことを心に決めています。家族だからこそ最低限の礼儀や節度を保ちたかった千夏さんにとって、義父の不用意な振る舞いは、いまも割り切れない苦い記憶として残っています。