昇進して責任ある立場に就いた40代。部下の指導や上司からの要求に追われ、管理職を辞めたいと考える人もいます。しかし、同じような立場にあっても、仕事を続ける人もいれば、退職を決意する人もいます。その違いはどこにあるのでしょうか。ある会社員が退職届を用意するまでに追い詰められた経緯と、同僚とのやり取りから考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「もう限界でした」45歳課長、退職届を胸ポケットに…40代で「管理職を続けられる人」と「逃げ出す人」の決定的な差 ※写真はイメージです/PIXTA

「辞めようと思ってる?」 年上の課長からのひと言

そんな高橋さんに声をかけてきたのが、同じ部署で働く47歳の課長でした。

 

「辞めようと思ってる?」

 

突然の問いかけに、高橋さんは言葉に詰まりました。退職の意思を誰かに伝えたわけではありません。それでも、仕事への向き合い方や日々の様子から、何かを感じ取っていたようです。

 

年上の課長も、部下のミスや上司からの要求に悩むことはあるといいます。ただ、部下が対応できる仕事まで自分で引き取ることはしません。判断に迷う案件は上司に相談し、部署内だけでは解決できない問題についても、必要な支援を求めていました。

 

高橋さんは、自分との大きな違いを感じたといいます。

 

部下が失敗すれば自分の指導が悪かったのではないかと考え、上司の要求に応えられなければ管理職としての能力が足りないのではないかと悩んでしまう。そうして一人で仕事を引き受けるうちに、自分の業務まで圧迫されていたのです。

 

一方、年上の課長は、管理職として部下の仕事に責任を持つことと、部下の仕事をすべて自分で処理することを分けていました。部下に任せるべき仕事は任せ、自分だけでは解決できない問題は上司に相談する。高橋さんが一人で引き受けていた仕事の一部を、年上の課長は部下への指導や上司との調整によって対応していたのです。

 

「自分が何とかしなければいけないと思っていました。でも、できないことまで一人で引き受けていたら、続けられません」

 

その後、高橋さんは、年上の課長のやり方を真似ることにしました。抱えている仕事を整理し、部下に任せる業務と自分が判断すべき業務を分ける。さらに上司に対して、どの業務にどれだけ時間がかかり、何が滞っているのかを具体的に説明する――退職届の提出はいったん保留。職場の人員不足が解消されたわけではありませんが、自分一人ですべてを引き受ける以外の方法を考え始めたといいます。

 

厚生労働省『令和6年労働安全衛生調査(実態調査)』では、仕事や職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じる管理的職業従事者のうち、その内容として「仕事の量」を挙げた人は52.7%、「仕事の失敗、責任の発生等」は44.5%でした。労働者全体ではそれぞれ43.2%、36.2%で、管理的職業従事者のほうが高い割合となっています。

 

管理職には、自分の業務だけでなく、部下の指導や部署全体の成果に対する責任もあります。高橋さんのように仕事を抱え込み、退職を考えるまで追い詰められるケースは、個人の悩みだけでは片づけられません。公的な調査からも、管理職が仕事量や責任に関するストレスを抱えている実態がうかがえます。