昇進して責任ある立場に就いた40代。部下の指導や上司からの要求に追われ、管理職を辞めたいと考える人もいます。しかし、同じような立場にあっても、仕事を続ける人もいれば、退職を決意する人もいます。その違いはどこにあるのでしょうか。ある会社員が退職届を用意するまでに追い詰められた経緯と、同僚とのやり取りから考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「もう限界でした」45歳課長、退職届を胸ポケットに…40代で「管理職を続けられる人」と「逃げ出す人」の決定的な差 ※写真はイメージです/PIXTA

45歳課長、退職届を胸ポケットに忍ばせて

「もう限界でした」

 

都内のメーカーに勤める高橋大輔さん(45歳・仮名)は、営業部の課長に昇進して3年目。妻と中学生の息子と暮らし、年収は約850万円です。周囲からは順調にキャリアを積んでいるように見られていましたが、本人は管理職の仕事に疲れ果てていました。

 

課長になる前は、自分の担当顧客への営業活動が中心でした。目標を達成するために何をすべきかを考え、成果を上げれば評価されていました。ところが、管理職になると、部下の営業成績の管理や取引先からのクレーム対応、部署全体の目標管理まで仕事が広がりました。

 

会議が続けば資料作成は夕方以降に回ります。部下の案件が残っていれば、自分の仕事が終わっていても帰れません。

 

「自分の数字だけを追っていればよかった頃のほうが、ずっと楽でした。今は自分が成果を出しても、それだけでは評価されません」

 

特につらかったのは、部下への指導でした。

 

入社5年目の部下が、大口顧客との商談で重要な条件を確認し忘れたことがありました。高橋さんは取引先への謝罪と条件の再調整に追われます。部下に再発防止を求めたいものの、強く注意すればパワーハラスメントと受け取られるのではないか、何も言わなければ同じ失敗が起きるのではないかと葛藤を抱えていました。

 

上司に相談しても、「課長なんだから、うまく指導してくれ」と返されるだけでした。仕事量を減らすよう相談しても、人手不足を理由に具体的な見直しはありませんでした。

 

高橋さんは退職を決意し、自宅で退職届を書いて翌週に会社へ持参しました。胸ポケットに入れた退職届をいつ上司に提出するか、出勤してからもそのタイミングをうかがっていました。