長期の積立投資によって口座残高が増えるのは喜ばしい反面、定年退職を迎えてから「この先どう取り崩すべきか」と悩む人は少なくありません。本記事では、会社員時代からの積立投資で資産を2,200万円まで増やした65歳男性の事例をもとに、老後の資産配分と取り崩し方のポイントをFPの田中佑輝氏が解説します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「気になって、気になって…」積立投資で〈資産2,200万円〉を築いた65歳元会社員。定年を迎えた途端、毎朝スマホから目が離せなくなったワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

【FPが解説】株価が上がり続けると、資産の配分は“勝手に”偏っていく

定年を迎え、資産の取り崩し期に入ったとき、多くの人がAさんと同じような悩みに直面します。この不安の原因の一つは、知らないうちに「資産の配分」が大きく偏っていることにあります。

 

長年放置していると、ご本人も気づかないうちに預金と株式のバランスが崩れているケースが少なくありません。ここからは、Aさんのような状況を、少し数字を使って整理してみます。

 

仮に、最初は2,000万円を株式と預金に1,000万円ずつ分けていたとします。その後、株式が2倍になると、株式2,000万円、預金1,000万円で合計3,000万円。資産が増えたのは喜ばしいことですが、株式の割合は5割から約67%に上がっています。

 

株式が2,000万円あれば、1日に2%動くだけで40万円が増えたり減ったりします。標準的な夫婦の年金(月23万7,000円ほど)を大きく上回る額です。定年後に値動きを年金に置き換えて考えるようになるのは、ごく自然なことでしょう。

 

この状態で株価が3割下がると、株式は1,400万円になり、合計は2,400万円。一度に600万円が減る計算です。最初の配分(5割)のままなら、同じ3割の下落でも減るのは300万円で済みました。相場の下落は前触れなく来ます。

 

今年も、6月に7万2,000円台をつけた日経平均が、7月末には6万1,000円台まで下げました。わずか1ヵ月余りで15%ほどの下落です。

 

現役のうちは、下がったあとも給料で暮らしながら回復を待てます。しかし、定年後はその支えがありません。取り崩しながら暮らす時期に大きく下がると、安くなった資産を売って生活費に充てることになります。

相場がどうなるかは誰にもわからない…「売るか悩む前」に決めること

相場がこの先どうなるかは、誰にもわかりません。したがって、「売るべきか、持つべきか」と悩む前に、まずは次の二つを決めておくことが大切です。

 

数年分の生活費を株式以外(安全資産)で持っておく

一つ目は、数年分の生活費を株式以外で持っておくことです。たとえば、年金だけでは毎月5万円足りない家庭なら、年に60万円、5年分で300万円になります。この分を預金などに分けておけば、株価が大きく下がった時期に慌てて売らずに済みます。日銀の利上げで、預金にもわずかながら利息がつくようになりました。現金で置いておくことへの抵抗は、以前より小さくなっているはずです。

 

毎月決まった額を取り崩すか、一定割合を取り崩すかを決める

二つ目は、取り崩し方です。毎月決まった額を取り崩す「定額取り崩し」は、計画が立てやすい反面、株価が下がった時期にも同じ額を売るので、資産の減りが早まります。一方、資産の一定割合を取り崩す「定率取り崩し」は、資産が長持ちしやすい代わりに、受け取る額が年によって変わります。どちらが合うかは、年金の額や暮らしぶりによって違います。