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「このまま77歳まで」が急に不安になった
総務省の2025年「家計調査」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入が月25万4,395円、可処分所得が22万1,544円でした。一方、消費支出は26万3,979円。平均的な高齢夫婦世帯でも、消費支出が可処分所得を上回っています。世帯によって収入や支出は異なりますが、年金生活では物価上昇が家計に影響しやすいことがわかります。
隆さんも、改めて毎月の収支を確認しました。
年金16万円から生活費を払い、住宅ローンは貯蓄と退職金から月9万円超を返済する。これまでは成立していた計画です。しかし、生活費が増えれば、貯蓄を取り崩すペースも速くなります。
さらに、隆さんが気にし始めたのが金利です。住宅ローンは変動金利型。金利上昇によって、今後の返済負担が変わる可能性があります。
「77歳まであと7年。今までは何も考えず払っていました。でも、これから7年も同じようにいくのか、と考えるようになりました」
そこで、一括返済をもう一度検討しました。ローンをなくせば、毎月9万円を超える返済はなくなります。物価が上がっても、住宅ローンの支払いに充てていた資金を生活費に回せます。
ただし、800万円を返せば、その分だけ手元の資金は減ります。70歳以降、病気や介護、住宅の修繕などでまとまった支出が発生する可能性もあります。
「今までは、77歳まで払えば終わると思っていました。でも、貯金が減っていくのを見ると、このままでいいのかと思うようになりました」
77歳まで、毎月払い続けるのか。いまここで、一括返済するか。
隆さんが最終的に決断したのは、300万円を繰り上げ返済すること。
「800万円を全部返してしまうことも考えました。でも、70歳を過ぎて手元のお金がなくなるのは、やはり不安だったんです」
300万円を繰り上げ返済すれば、残る住宅ローンは500万円。隆さんは、返済期間を短くするのではなく、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」を選びました。
残り7年間で返済する前提なら、利息を考慮しない単純計算で、毎月の返済額は約6万円。これまでの9万5,000円前後から、月3万円ほど負担を抑えられます。
一方で、手元には老後の生活費や、病気、介護、住宅の修繕などに備える資金を残します。
「ローンをゼロにすることより、これからの生活を崩さないことを優先しました」
総務省『家計調査 家計収支編(2025年)』によると、65歳以上夫婦無職世帯の月平均可処分所得22万1,544円に対し、消費支出は26万3,979円で毎月4万2,434円の赤字が発生しています。同調査で住宅ローンを返済中の高齢夫婦無職世帯は2.0%にとどまり、少数派であることが分かります。
年金生活でのローン返済は家計の大きな圧迫要因です。しかし、完済を急いで手元資金を失うと、医療・介護や物価高への対応力を欠いてしまいます。一部繰り上げ返済で月々の負担を軽減しつつ生活防衛資金を残す決断は、有効な選択のひとつといえそうです。