住宅ローンは、定年を迎えたからといって終わるとは限りません。年金生活に入ってからも返済が続けば、老後の家計に影響します。70歳で残債800万円を抱える男性は、当初、あえて一括返済を選びませんでした。ところが、その後の物価高と金利上昇で、判断を見直すことになります。
〈年金16万円〉70歳男性「住宅ローン、あと800万円残ってます」…77歳まで〈月9万円超〉を払い続ける厳しい現実 ※写真はイメージです/PIXTA

年金16万円、住宅ローンは月9万円超…当初は問題なかった

「あと800万円くらい残っています」

 

70歳の高橋隆さん(仮名)は、自宅の住宅ローンについてこう話します。

 

30年前に購入した一戸建て。65歳で定年退職した時点でも、住宅ローンは残っていました。退職金を受け取ったとき、隆さんは一括返済も考えました。残債をすべて返してしまえば、毎月の住宅ローンはなくなります。ただ、800万円を一度に支払えば、手元の資金は大きく減ります。

 

「その後の生活を考えると、全部使ってしまうのは怖かったんです」

 

そこで一括返済は見送りました。

 

現在の年金は月16万円。これを食費や光熱費などの生活費に充て、住宅ローンについては、退職金とこれまでの貯蓄から支払う計画を立てました。

 

残りの返済期間は7年。利息を考慮しない単純計算でも、800万円を7年間で返すには月約9万5,000円が必要です。実際の返済額は金利によって変わります。

 

当初、隆さんはこの返済を特に問題だとは考えていませんでした。

 

貯蓄を取り崩しながらでも、毎月の返済はできていたからです。

 

国土交通省『令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書』によると、金融機関が融資審査で考慮する項目として「完済時年齢」を挙げた割合は98.4%に達しています。「借入時年齢」も96.2%と高く、健康状態(96.1%)や年収(94.2%)と並んで、ほぼすべての金融機関が審査の重要項目としています。具体的な完済時年齢の上限として「80歳未満」を設定している金融機関が約75%(回答978機関中732機関)と圧倒的多数を占めます。住宅ローンは「借りられるか」だけでなく、「何歳まで返す計画なのか」が審査・家計双方で決定的に重要な意味を持ちます。

 

隆さんも、77歳になればローンは終わる。それまでは貯蓄で返していけばいいと考えていました。ところが、少しずつ状況は変わっていきました。

 

デフレからインフレへ。食料品、電気代など、日々の支出が以前より増えていきます。一方で年金受取額は大して変わりません。生活への不安が一気に膨らみました。