一緒に暮らす夫婦でも、「家計の管理は配偶者任せ」というケースは珍しくありません。しかし、その“任せっきり”が、配偶者の死によって不測の事態を引き起こすリスクとなることも。事例をご紹介します。※事例の登場人物はすべて仮名です。
不甲斐ないです…65歳の若さで妻、死去。「遺族年金たったの月2,000円・生命保険金300万円」の66歳夫、41歳長女に「助けてくれ」と跪いたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

配偶者の他界が招く「生活・口座・年金」のトリプルリスク

配偶者が亡くなった際にまず直面するのが、金融口座や名義変更の手続き問題です。原則として口座名義人が死亡すると金融機関は口座を凍結し、遺産分割協議が整うまで引き出しが制限されます。2019年の民法改正により「預貯金の仮払い制度」が創設され、一定額までは単独で引き出せるようになったものの、暗証番号の失念や届出印の紛失、名義変更の手続きには一定の時間と書類提出を要します。自分名義の口座であっても、普段から管理を任せきりにしていると、突発的な葬儀費用や当面の生活費の確保に支障をきたすことになるでしょう。

 

また、残された配偶者の生活を支えるはずの「遺族年金」にも制度上の注意点が存在します。厚生労働省の年金制度の規定において、夫が妻の死亡により受け取る「遺族厚生年金」は、妻が婚姻前などに厚生年金へ加入していた期間や納付実績に基づいて計算されます。妻が専業主婦期間の長い場合や加入期間が短い場合、支給される遺族厚生年金は月数千円程度にとどまるケースも珍しくありません。さらに、子どもが18歳に達した年度の末日を超えている場合(本事例のように成人している場合)は「遺族基礎年金」の受給対象外となるため注意が必要です。

 

生活面においても、単身となったシニア男性の自立は切実な課題です。自炊能力の欠如による外食・惣菜への依存は食費を大幅に増大させ、年金収入を中心とする家計を圧迫します。さらに、孤立感や孤独感はメンタルヘルスの悪化を引き起こしやすく、生活意欲の低下へとつながることも。

 

こうしたリスクを防ぐためには、夫婦が健在なうちから資産や口座情報、加入している生命保険の内容、暗証番号の保管場所などを共有し、可視化しておく「家計の共有化」が不可欠です。あわせて、最低限の家事スキルや生活習慣を日常的に身につけ、どちらが先に倒れても一人で生活を維持できる環境を整えておくことが、残された側の人生を守る現実的な防衛策となります。

 

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