※写真はイメージです/PIXTA
「孫をかわいがる」と「親を尊重する」は別の話
博さんにとって、孫に会えなくなることは予想外でした。
「孫には何も悪いことをしていないのに、なぜ会わせてもらえないのかと思いました」
しかし、愛さんから何度も言われたことで、博さんは少しずつ考えるようになりました。
自分が誠さんをどう評価するかは、自分の考えです。しかし、孫にとっては、誠さんは父親です。その父親を祖父から否定されることが、子どもにとってどう受け止められるのか。博さんは、そこまで考えていませんでした。
「この前は悪かった。誠さんに言いたいことがあったとしても、孫の前で言うことじゃなかった」
愛さんは、すぐに以前のように接することはできなかったといいます。
博さんも、誠さんの仕事について自分の考えを変えたわけではありません。それでも、以前のように孫と会えるようになるためには、自分が口を出す場所を考えなければならないと思うようになりました。
しばらくして、愛さんから連絡がありました。
「今度、玄太と遊びにいくよ」
久しぶりに孫と会った博さんは、以前のように仕事の話をすることはありませんでした。学校の話を聞き、好きな食べ物を尋ね、一緒に食事をしました。そして帰り際、玄太さんから「おじいちゃん、また遊ぼうね」と言われました。
博さんにとっては、以前なら当たり前だった言葉でした。しかし、孫と会えない時間を経験したあとでは、その一言の重みが違って感じられたといいます。
国立社会保障・人口問題研究所『第16回出生動向基本調査』(2021年)によると、第1子が3歳になるまでに祖母から子育ての手助けを受けた割合は57.8%に上り、祖父からも約3割の夫婦が手助けを受けています。このように祖父母の存在が子育ての支えとなる一方で、孫へのかわいがりが行き過ぎて親(子世代)の尊厳や方針を否定するような言動に及ぶと、親子間の信頼関係に亀裂が生じ、孫との交流が絶たれる事態を招きかねません。
孫と良好な関係を保ち続けるためには、子世代が主導する家庭の方針や父親・母親としての立場を尊重し、口出しの範囲を見極めた節度ある距離感を意識することが重要といえます。