祖父母にとって、孫の成長は楽しみの一つです。そのようななか、ちょっとした言動ひとつで子ども家族との関係が変わってしまうこともあります。ある家族の事例から、親子と祖父母の距離感について考えます。
「孫に会わせてくれない…」 〈年金月25万円・78歳祖父〉、娘夫婦と疎遠になった「たった一つの原因」 ※写真はイメージです/PIXTA

 78歳祖父が理解できなかった娘の怒り

妻と2人暮らしの高橋博さん(78歳・仮名)。夫婦で月25万円ほどの年金で生活を送っています。長女の愛さん(45歳・仮名)家族も同じ市内に住んでおり、以前は月に1度ほど交流がありました。

 

小学生の孫は高橋さん夫婦になつき、会えば学校の話を聞いたり、一緒に食事をしたりしていました。愛さんとも頻繁に連絡を取っていました。ただ、博さんには以前から、娘婿の誠さん(48歳・仮名)に対して気になることがありました。

 

誠さんは、もともと会社員でした。しかし、40代半ばで会社を辞め、以前から興味を持っていた仕事で独立しました。ところが、思うように仕事が軌道に乗らず、収入が安定しない時期が続いていました。愛さんも働いて家計を支えています。

 

日本政策金融公庫『2025年度起業と起業意識に関する調査』によると、起業家が事業を行ううえで問題と感じていることとして「売り上げを安定的に確保しづらい」が42.5%と最多に挙げられています。また、現在の月商が「50万円未満」にとどまる起業家も68.3%と7割近くを占めています。自分の興味や経験を生かして脱サラ・独立に踏み切る人がいる一方で、事業初期に安定した取引先を獲得し、十分な収入を得ることには多くのハードルが存在するのが実情です。

 

博さんは、パートに出て家計を支える娘の姿を見てきました。

 

「子どももいるんだから、まず家族の生活を考えないと」

 

何度か愛さんにそう言ったことがあります。しかし、愛さんは、「お父さん、誠さんはちゃんと頑張ってるから」と答えるばかりでした。

 

博さんには、それが納得できませんでした。「いつまでも夢を追っている場合じゃないだろう」――そんな思いを、娘には言っても、誠さん本人にはあえて言わずにいました。

 

問題が起きたのは、長女の家で夕食を一緒に食べたときでした。誠さんが食事の途中でスマートフォンを確認すると、博さんが「仕事か?」と聞きました。

 

「はい。取引先からです」

 

誠さんが答えると、博さんは以前から思っていたことを口にしました。

 

「仕事、仕事って言うけど、いつになったらちゃんと稼ぐんだ?」

 

食卓が静かになりました。誠さんが黙っていると、博さんはさらに続けました。

 

「子どももいるんだぞ。いつまでも夢を追ってる場合じゃないだろう」

 

そこには孫の玄太さん(仮名・10歳)もいました。誠さんは何も言いませんでした。しかし、愛さんは明らかに怒りの表情を浮かべていました。

 

帰り際、愛さんが博さんに注意します。

 

「お父さん、子どもの前で誠さんのことを悪く言わないで」

 

博さんは「事実を言っただけだ」と思いました。自分は娘夫婦の生活を心配している。誠さんを憎んでいるわけでもない。ところが、愛さんが問題にしたのは、父親が夫の仕事を批判したことだけではありませんでした。

 

「お父さんがどう思うかは自由。でも、子どもの前で誠さんのことを悪く言うのだけはやめて」

 

博さんは、まだ納得できませんでした。

 

「家族のことを心配して何が悪いんだ」

 

しかし、その数日後、愛さんから言われた一言に耳を疑います。

 

「しばらく、お父さんとは会わない。玄太と会わせたくない。子どもの前で父親を悪く言うような人に会いたくないの」