祖父母が孫の教育費を負担することは、決して珍しいことではありません。子世代を助けたいという思いから、親の側が自らお金を出すケースもあります。ただ、その援助が本当に孫のためになっているのかは、別の問題です。ある家族のケースから考えていきます。
「孫には1円も出しません」〈年金月14万円・貯金2,500万円〉 72歳母、娘夫婦への「月3万円の援助」を突然やめた、小5孫の「切実なひと言」 ※写真はイメージです/PIXTA

「孫のためなら」と教育費を出してきた72歳母

東京都内の持ち家で一人暮らしをしている佐藤恵子さん(72歳・仮名)。夫は数年前に亡くなり、現在は月14万円ほどの年金を受け取りながら生活しています。また預貯金は約2,500万円あり、経済的に不安はないといいます。

 

44歳になる娘の裕子さんは、夫と小学5年生の長男・蓮さんと小学4年生の長女・葵さんの4人暮らし。裕子さん夫婦は共働きですが、2人の子どもの教育費が家計の負担になっていました。きっかけは、蓮さんに加えて、葵さんも塾に通い始めたことです。

 

「今どき、塾って結構かかるんだよね。2人分となると大変」

 

そんな裕子さんの言葉を聞いて、恵子さんは「子ども2人分となると大変でしょう。私が出すから」と言って、月3万円ほどの塾代の一部を毎月渡すようになりました。

 

恵子さんにとっては、老後の生活に困らないだけの預貯金があり、年金もあります。孫のために使えるお金があるなら、出してあげたい――そんな気持ちでした。

 

「これくらいなら大丈夫。孫のためですから」

 

裕子さんは当初、「お母さんのお金は、お母さんのために使って」と話していたといいます。しかし、家計が苦しいという現実を前に、ありがたく受け取るようになりました。

 

文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』によると、公立小学校に通う子ども1人当たりの年間学習費総額は36万6,599円で、そのうち塾代や習い事などの「学校外活動費」が25万6,489円と全体の約7割(70.0%)を占めています。特に学習塾費は高学年になるほど増加する傾向にあり、公立小4で年間8万935円、小5で10万6,550円に上ります。

 

塾代だけではありません。模試の費用や教材費が必要になれば、「今回は私が出すから」と恵子さんが財布を開きました。

 

孫が成績を上げれば嬉しい。

志望校に合格すれば、もっと嬉しい。

 

恵子さんは、自分のお金が孫の将来につながっていると思っていたのです。

 

ところが、ある日のことです。恵子さんの家に遊びに来た蓮さんが、珍しく塾の話をしようとしませんでした。

 

「最近、塾はどう?」

 

そう聞くと、しばらく黙ったあと、

 

「……もう、行きたくない」

 

と答えました。恵子さんは、成績が悪いのかと思いました。しかし、そうではありませんでした。

 

「毎日、学校が終わってから塾に行くのがしんどい。友達とも遊べないし、家に帰ってからも宿題がある」

 

それでも通っている理由を聞くと、蓮さんはこう言いました。

 

「お母さんが、せっかくおばあちゃんに出してもらってるから、やめちゃダメだって」

 

恵子さんは、その言葉を聞いて何も言えなくなりました。自分は、孫を応援しているつもりでした。しかし孫にとっては、自分のお金が「やめたいものをやめられない理由」の一つになっていたのです。