学生時代の実家の事情から奨学金を借りて進学した経験は、社会人となりライフイベントに変化を迎えた際、新たなハードルとなって立ち塞がることも……。現在34歳のAさんの事例を紹介しよう。
「私以外、借りている子はいませんでした」…お嬢様学校在学中にひとりで背負うことになった奨学金(560万円)、16歳で起きた〈実家の異変〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

子育てと、奨学金返済をどう両立させるか

少子化対策が国の課題とされる一方で、奨学金の返済には、出産・育児に伴う一時的な返済猶予が結果として返済期間の長期化を招くケースがある。

 

産休・育休などで収入が減る時期に返済を猶予できること自体は、返済者にとって重要な支えだ。しかし、ライフイベントによって返済期間が長期化することまで考えると、子育てと返済を両立するための支援には、まだ考える余地があるのではないだろうか。

 

たとえば、出産・育児による返済猶予を利用した場合でも、その後の返済負担が過度に長期化しない仕組みや、子育て世帯を対象とした返還支援などは、検討できる余地がある。実際に、特定の職種や地域への就業などを条件とした奨学金の返還支援は、自治体や企業などで導入されている。こうした取り組みを参考にしながら、ライフイベントによって返済負担が長期化する人への支援を考えることも、一つの方法と考える。

 

もう一つ、Aさんの「借金があるってことだよね」といわれた経験も見過ごせない。

 

奨学金を借りずに進学できた人にとっては、奨学金は教育を受けるための支援制度として捉えられる。一方、実際に借りた人にとっては、卒業後も長く返済が続く債務でもある。この認識の差が、返済者の孤立につながることもある。

 

制度を整えることと、制度を正しく知らせること。そして、人生の変化を前提に返済のあり方を考えること。Aさんのような返済者が、「出産のたびに返し終わる日が遠ざかる」と感じずに済むためには、返済を一時的に止められる仕組みだけでなく、その後まで見据えた支援についても考えていく必要があるのではないだろうか。

 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者

 

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