有利子の奨学金を利用する返済者にとって、昨今の金利上昇は総返済額を左右する重大な局面を迎えている。固定方式の上限到達や見直し方式の利率上昇が進むなか、「一刻も早く繰上げ返済をして利息を削るべきか、それとも将来の出費に備えて手元資金を残すべきか」という判断に悩む人も少ない。制度をどう活用し、家計の変化と折り合いをつけるべきなのか。15年におよぶ返済を経験した当事者のリアルな教訓とともに、金利上昇時代における向き合い方を探る。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
晩婚夫婦、40歳を過ぎてから授かり、「なんとかなる」と思ったが…〈500万円の奨学金〉を背負わせた33歳息子の現在 (※写真はイメージです/PIXTA)

高校3年の秋、父が無職に

Aさんは千葉県船橋市出身の現在33歳。両親は晩婚で、40歳を過ぎてからAさんを授かっており、Aさんが大学に入学する年に父は定年を迎える計算だった。母はパートで働いていた。学費のことは、進路を考えはじめた段階からの家族の懸念事項。状況が大きく変わったのは、高校3年の秋だ。リーマンショックの影響が父の勤め先にもおよび、父は職を失った。

 

「それまでも余裕があったわけではないですが、定年まではなんとかなるという前提だったんです。それが崩れて、進学どうするという話になりました」

 

Aさんは法学部で政治学を学びたいと考えていた。大学院への進学も視野に入れており、学費がかかることは覚悟のうえだった。進学を諦めるか、奨学金を借りて進むか。選択肢は限られていた。

 

「やむを得ず借りた、という経緯です。前向きに選んだというより、ほかに手段がなかった」

 

申し込んだのは、日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金。有利子の貸与型だ。大学院まで進む可能性も考え、借入額には余裕を持たせた。結果として、大学4年間で約500万円を借りることになった。

 

高校では説明会が開かれ、申込書を書いた。周囲にも奨学金を借りる同級生がいたため、手続きそのものに抵抗はなかったという。手続きのなかで繰り返し説明されたのは、月額をいくらに設定できるかという話だった。4万円、6万円、8万円、10万円――選択肢の表を見ながら決めていった記憶はあるものの……。

 

「でも、それを何年かけて、月いくら返すことになるのかという説明は、ほとんど記憶にないんです。借りる側の手続きの話ばかりで。そこがいま思うと、一番聞きたかったところでした」

出版社時代、返済を止めた6年間

大学卒業後、Aさんは小規模な出版社に編集職として就職した。やりたい仕事に就けたものの、給与水準は厳しかった。手取りは月18万円に届かず、都内での一人暮らしを賄うための生活費を払うと手元にはほとんど残らない。そこに毎月の返済が加わる。数ヵ月で限界が来た。

 

「払えないというより、払うと生活が成り立たないという状態でした。調べて、返還期限猶予という制度があることを知って申請しました」

 

猶予は認められ、返済は一時的に止まった。生活はひとまず落ち着いた。

 

「あのときは猶予がなかったら詰んでいたので、助かりました。ただ、元金は減らない。止めているあいだも残高は同じまま、年齢だけが上がっていく感覚がありました」