(※写真はイメージです/PIXTA)
「最初のお給料くらい好きに使えばいい」と思っていたが…
埼玉県内に暮らすケイコさん(54歳・仮名)は、会社員の夫(56歳)と長男のコウタさん(24歳・仮名)の3人暮らしでした。ケイコさんは長年、家事や子育てを中心に担い、現在は近所のスーパーで週2日パートとして働いています。
大学を卒業したコウタさんは、その春、第一志望だった企業に就職しました。勤務地は自宅から通える範囲だったため、そのまま実家暮らしを続けることに。初任給が出ても、ケイコさん夫婦はすぐに生活費を求めませんでした。
「社会人になったばかりですし、スーツや靴、同期との付き合いにもお金がかかるでしょう。最初のお給料くらいは好きに使えばいいと思っていました」
しかし、2ヵ月、3ヵ月と経っても、コウタさんから「家にお金を入れる」という話はありませんでした。朝はケイコさんが用意した食事を食べ、帰宅すれば夕食がある。脱いだ服は洗濯カゴへ入れておけば、洗って畳んでもらえる。休日も料理や掃除をすることはほとんどありません。大学生のころと変わらない生活のまま、自由に使えるお金だけが増えていました。
「洋服を買ったり、同期と旅行に行ったり。ボーナスで高い時計を買おうかな、なんて話もしていました。でも家には1円も入れていませんでした」
「母さんは週2しか働いてないじゃん」
ある休日、ケイコさんは朝からパートに出ていました。出勤前に洗濯機を回し、家にいたコウタさんに「終わったら干しておいて」と頼みました。ところが帰宅すると、洗濯物は洗濯機の中に入ったまま。コウタさんは自室でゲームをしていました。
「洗濯物、頼んだよね?」
そう言うと、「あ、忘れてた」と一言。
ケイコさんが「家にいるんだから、それくらいやってよ」と言うと、コウタさんは面倒そうに、「でも母さん、週2しか働いてないんだから時間あるじゃん。パートなんだし」と言いました。
その言葉は、ケイコさんのプライドをくじくには十分でした。勤務日数は週2日でも、ケイコさんは仕事に責任を持って取り組んでいます。職場でも頼りにされ、人手が足りないときに声をかけられたり、新人から相談されたりすることもあります。
「自分なりにちゃんと働いているという自負がありました。だから『週2しか』と言われたのは、正直かなり傷つきました」
第一志望の会社に入り、自信をつけたコウタさんは、次第に母親を軽く見るような発言も増えていました。
「会社ってそんな甘くないよ」「母さんは会社員じゃないからわからないと思うけど」
ケイコさんには、フルタイムで働く自分のほうが「上」だと思っているように感じられました。