(※写真はイメージです/PIXTA)
「前のとき、俺は何もしなかった。それを後悔している」
「父さん、前のときのこと知らないだろ」
ショウタさんは、第一子出産後の妻の状態について話し始めました。夜中の授乳でほとんど眠れず、日中も赤ちゃんの世話が続く。身体が十分に回復していないなか、食事の支度や洗濯もしなければならない。ショウタさん自身も仕事から帰ればできるだけ家事や育児をしていたものの、平日の大部分をマイさんが1人で担っていたといいます。
「俺、あのとき仕事のほうが大事だと思っていたんだよ。というより、仕事を休んだらダメだと思ってた」
マイさんから責められたことはなかったそうです。だからこそ、あとになって妻が「あのころは本当にきつかった」と話すのを聞き、自分が思っていた以上に負担をかけていたことに気づきました。
「次に子どもができたら、今度はちゃんと休むって決めていたんだ」
それでもヒロシさんは、「俺たちのころは、みんなそうやって子育てしてきた」と言ってしまいました。
ショウタさんはしばらく黙ったあと、「じゃあ、俺たちは俺たちのやり方でやるから。もうこの話に口出さないで」と答えました。
その後、親子の連絡は途絶えました。妻が孫の出産予定日について連絡しても、ショウタさんから返ってくるのは必要最低限の返信だけ。ヒロシさんも意地になり、自分から連絡することはありませんでした。
男性の育休取得率は50%を超えた
ヒロシさんの感覚は、かつての日本では決して珍しいものではありませんでした。しかし、男性の育休取得をめぐる状況は大きく変わっています。
厚生労働省の「令和7年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は50.9%。前年度の40.5%から10.4ポイント上昇し、初めて50%を超えました。さらに2025年4月からは、「出生後休業支援給付金」も始まっています。
一定の要件を満たし、子どもの出生直後の一定期間に夫婦ともに14日以上の育児休業を取得する場合などには、最大28日間、通常の育児休業給付の67%に13%が上乗せされ、休業開始前賃金の80%相当が支給されます。育児休業中は一定の要件のもとで社会保険料が免除され、育児休業等給付は非課税であるため、厚生労働省はこの80%を「手取り10割相当」としています。
ただし、この上乗せが受けられるのは最大28日間です。その後も一定の要件を満たせば、育児休業開始から180日までは原則として休業開始時賃金日額の67%相当の育児休業給付金が支給されます。つまり「2ヵ月休んでも収入がまったくなくなる」というわけではありませんが、勤務時とまったく同じ収入が保証されるわけでもありません。
ショウタさん夫婦も、育休中にどの程度の給付を受け取れるのかを確認したうえで、貯蓄から補う金額まで話し合っていました。
「家族のために働く」の意味も変わっていく
しばらくして、ヒロシさんは妻から言われました。
「あなたは『家族のために仕事を休まなかった』と思っている。でもショウタは『家族のために仕事を休む』って決めたんじゃないの?」
その言葉には、返す言葉がなかったそうです。ヒロシさんが長年働き続けたのも、家族を養うためでした。一方、ショウタさんが2ヵ月の育休を取るのも、妻と2人の子どものためです。どちらも「家族のため」でありながら、選んだ行動は正反対でした。
「息子のことを心配して言ったつもりでした。でも、『自分のやり方が正しい』と思いすぎていたのかもしれません」
第二子が生まれる日は近づいています。ヒロシさんはまだ、息子に連絡できずにいます。
収入、キャリア、家事、育児――。子どもが生まれたあとの負担をどのように分けるかに、すべての家庭に当てはまる正解があるわけではありません。制度を利用した場合の家計への影響を夫婦で確認し、それぞれの働き方や体調、家庭の事情を踏まえて選ぶことが重要です。
そして親世代にとっても、「自分たちのころはこうだった」という経験と、いま子育てをする夫婦にとっての最善は、必ずしも同じではないのかもしれません。
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