住宅ローンの変動金利上昇への焦りから、繰上げ返済を急ぐ人が増えています。しかし、住宅ローンの返済は早く終わらせればいいという単純なものでもありません。見込み違いの返済計画は思わぬリスクを招くことも……。本記事では、繰上げ返済を行ったAさん(53歳)の事例から、金利上昇期に確保すべき「適切な資金戦略」についてFP1級の川淵ゆかり氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
住宅ローンの繰上げ返済、しなければよかった…金利上昇の恐怖に耐えかねた〈月収60万円・53歳会社員〉、「焦り返済」で直面する絶望の5年後【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「金利は上がらない」と信じた変動金利…マイナス金利解除後の焦り

Aさん 53歳(2026年4月時点)

ローン契約時:41歳、妻 29歳

10年返済後から金利が上がりはじめる

2026年初(年が明けてまもなく)200万円を繰上げ返済

 

Aさん(53歳)は製造業の部長職。月収は60万円です。12年前に結婚した一回り年下の妻と、小学生の息子と3人で暮らしています。結婚当時は仕事も順調で、収入にもゆとりがあったため、少し背伸びして高層階のマンションを購入しました。

 

【Aさんの住宅ローン概要】

返済開始:2014年4月(41歳・返済期間35年)   

借入金額:4,000万円(ボーナス返済なし/元利均等返済)

当初金利:0.65%(5年ルール・125%ルール適用あり)

毎月返済額:10万6,508円

 

ローン契約時、周囲から「日本の金利は当分上がらない」といわれたAさんは、深く考えずに変動金利型を選択しました。しかし、2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策を解除して以降、相次ぐ金利上昇に頭を悩ませています。

 

現在のところ「5年ルール」が適用されているため、毎月の返済額自体は変わっていません。ただ、半年ごとの金利見直しによって返済額の内訳が変化し、元金の返済割合が減って利息割合が増え続けています。

 

銀行からの通知が届くたびに増える利息部分を確認しながら、Aさんの不安は募るばかりでした。55歳になれば役職定年による収入ダウンも控えているため、子どもの教育費や老後資金を考えると、ローンの返済額アップはなんとしても避けたいところです。

金利上昇に怯えて実行した繰上げ返済

そんな折、2025年12月に政策金利が引き上げられたニュースを目にします。政策金利は変動金利型ローンの金利の指標となります。「いまのうちに少しでも返済しておけば、返済額は上がらないんじゃないのかな」と考えたAさんは、妻と話し合った末、2026年1月に手元資金から200万円の繰上げ返済を行いました。

 

金利上昇ペース加速に悩む

2026年に入ってからも金利は上昇し、次のように、2026年9月にはわずか3ヵ月という速さで金利上昇が進んでいます。

 

出所:筆者作成
[図表1]日本の政策金利推移(マイナス金利解除後) 出所:筆者作成

 

Aさんは、繰上げ返済は実行したものの、金利上昇の勢いが衰えないことから、筆者のもとに相談に来られました。