ハラスメント防止や若手の離職対策に配慮するあまり、すべての業務と責任を一人で抱え込んで疲弊する中間管理職。自らを追い詰める背景には何があるのでしょうか。年収820万円の48歳管理職の事例から、管理職の在り方について考えます。
「もう限界です…」〈年収820万円・48歳管理職〉、金曜朝に目撃した手つかずの業務に絶望。残業ゼロで定時退社した新人社員の「残酷なひと言」 ※写真はイメージです/PIXTA

「キャリアが描けない…」部下が突きつけた現実

金曜の午後、小林さんは何とか顧客向けの資料を仕上げました。しかし、自分が本来やるべきだった部内の仕事は手つかずのままです。部下から上がってくる相談への対応、社内会議の準備、翌週の業務計画、トラブル対応……。マネージャーとして考えなければならない仕事は、日々積み上がっていきます。

 

ところが小林さんには、それらを考える時間がありません。

 

部下が抱えきれない仕事を引き取り、顧客対応をし、現場の実務まで処理する。気づけば、マネージャーでありながら、最も現場の作業に追われているのです。

 

こうした管理職の負担は、個人の問題だけではありません。厚生労働省『労働経済の分析』によると、管理職が感じる職場環境の変化として「業務量が増加している」が最も多く挙げられました。また、管理職の悩みとして「部下がなかなか育たない」「部下の人事評価が難しい」「職場の又は自分の業務量が多すぎる」などが挙がられています。

 

さらに、厚労省『管理監督者を対象にした働き方改革に関する意識調査』では、管理監督者を対象とした働き方改革に期待する効果として、「管理監督者がマネジメント業務に集中できること」が29.1%でした。管理職自身の負担を減らし、本来の管理業務に集中できる環境づくりが、企業側の課題としても認識されていることが分かります。

 

しかし、働き方改革が進むなか、管理職の期待に企業が応えているとは言いにくい状況。小林さんの会社もそうでした。

 

部下に残業をさせない。ハラスメントにも配慮する。若手の離職も防ぐ。その一方で、現場で発生する仕事は管理職が引き取る。結果として、小林さんは「管理する人」ではなく、「足りない人手を埋める人」になっていたのです。

 

そして数日後、小林さんのもとに加藤さんから一枚の退職届が提出されます。

 

「小林さんのようにはなれない。将来のキャリアが描けないんです。この会社では」

 

小林さんは、その言葉に返すことができませんでした。自分もまた、管理職になってからというもの、部下を育てる時間より、目の前の仕事を処理する時間のほうが長くなっていたからです。

 

「もう限界だ……」

 

この状況下で管理職を続けていけない――小林さんが抱えていたのは、単なる「部下が仕事を終わらせなかった」という問題ではなかったのです。