子や孫の進学に際して、お祝いだけでなく学費の一部を援助する祖父母は少なくありません。喜んでもらいたい、将来の役に立ちたいという純粋な気持ちからのお金であっても、そこには「家族とのつながり」や「感謝」への密かな期待が重なることもあるでしょう。しかしなかには、援助した側が思い描いていた「その後」と現実とのギャップに直面し、深い落胆を抱くケースも。高齢期における子や孫への資金援助の実態と、世代間で生じる自立意識のギャップに迫ります。※事例の人物名はすべて仮名です。
シルバーウィークに期待していました…年金月15万円・71歳祖母、「孫の学費110万円」を振り込むも、息子家族に期待を裏切られたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

期待を裏切られたシルバーウィーク

そして迎えたシルバーウィーク。待ちに待った息子家族が実家にやってきました。しかし、ツヨシさんの口から出たのは、玄関先での「あ、この前はお金ありがとう」という、あまりにも軽い一言だけ。当の孫であるソウさんに至っては、「ばあちゃん久しぶり! 今日のご飯なに?」と、お金のことには触れてもくれません。

 

手料理を振る舞いながらも、エツ子さんの心の中にはモヤモヤとした不満が募っていきました。

 

食後、ソウさんが風呂に行き、ツヨシさんと二人きりになったタイミングで、エツ子さんはたまらず口に出してしまいました。

 

「ソウちゃんのことだけど……大金をもらったら、直接お礼を伝えさせるべきよ。そのくらい、親ならしっかり子どもにしつけなさいな」

 

すると、ツヨシさんの顔からスッと笑顔が消えました。少しの沈黙のあと、ため息混じりにこういったのです。

 

「お金のこと、ソウにはそもそもいってない。何度もいらないっていっただろ。ミワコとも話して、うちの家計は自分たちで責任持つって決めてたんだよ。いきなり大金が送られてきて……突き返すのも角が立つから一応もらったけど、母さんだって年金暮らしでそんなに余裕はないだろ。母さんのしかるべきときに使わせてもらうから。正直、送ってこないでほしかった」

 

孫を想っての行動が、息子夫婦のプライドを傷つけていたことに気づかされ、エツ子さんはただ黙り込むしかありませんでした。

本当に必要な援助

内閣府『令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)』によると、60歳以上の25.2%が「子や孫の生活費の一部またはほとんどを負担している」と回答。また、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げた人も25.8%にのぼります。

 

高齢期に入り、自分自身の消費よりも「次世代の役に立ちたい」と考えるのは自然な感情であり、実際に多くのシニアが資金援助を行っている実態があります。

 

では、受け取る側の子世代は本当に「親の援助がなければやっていけない」状態なのでしょうか。

 

総務省統計局の『家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果』によると、二人以上の世帯の貯蓄現在高は平均2,059万円ですが、平均値を下回る世帯が66.1%と約3分の2を占め、一部の富裕層に偏った分布となっています。しかし、働く世代である「勤労者世帯(二人以上世帯の56.2%)」に絞ってみると、少し違った景色が見えてきます。

 

◎勤労者世帯の貯蓄現在高平均:1,717万円(前年より138万円・8.7%増)

◎貯蓄保有世帯の中央値:1,015万円(前年947万円)

 

全体平均よりは少ないものの、勤労者世帯の貯蓄は前年より増加しており、中央値で見ても1,000万円を超えています。子世代は子世代なりに、夫婦で共働きをするなどして教育資金を計画的に準備し、「自分たちの力でやりくりしている」という自負を持っているのかもしれません。

 

いくら身内であっても、別々の家計を持った独立した家庭です。援助を申し出た際に「自分たちでやるから大丈夫」と断られたのであれば、その言葉と子どもの自立心を尊重することも大切です。勝手な推測でお金を押し付けるのではなく、適度な距離感を保ちながら見守ることこそが、親子関係を良好に保つ秘訣なのではないでしょうか。

 

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