※写真はイメージです/PIXTA
月収50万円の会社員を襲った「義母の介護」という現実
都内の大手メーカーに勤務する木村誠さん(54歳・仮名)は、手取り月収50万円ほどで、妻の木村由香里さん(52歳・仮名)と暮らしていました。しかし、その生活は突然変化します。誠さん夫妻の自宅から電車で片道1時間ほどの近県で一人暮らしをしていた義母の佐々木初枝さん(78歳・仮名)が認知症を発症し、自宅内で転倒して要介護2と認定されたためです。
本来であれば実子である由香里さんが支援する流れが一般的ですが、由香里さんは持病の悪化により、長距離の移動や日常的な身体介護を行うことが困難な事情を抱えていました。
「住み慣れた家を離れたくない」と強く主張する初枝さんの意思もあり、施設入所や同居は現実的な選択肢から外れました。誠さんは「妻に代わって自分が義母を支えよう」と決意し、仕事の合間や休日に義母の自宅へ通う介護を引き受けることにしました。
初枝さんの収入は公的年金の月額約10万円のみです。デイサービスや訪問介護の利用料、配食サービスの代金を支払うと手元にはほとんど残りません。毎週末の往復交通費や、不足する生活費の補填は、すべて誠さんの手取り収入から捻出せざるを得ませんでした。
厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、要介護者と同居して主な介護を担う者のうち、男性の割合は36.5%を占めています。また、同居の主な介護者の年齢階級を見ると、50代が16.1%を占めるなど、働き盛りの現役世代が介護のキーパーソンとなるケースも少なくありません。
さらに、経済産業省の「仕事と介護の両立に関する実態調査」によると、介護に従事する従業員の約4割が「肉体的・精神的な負担感が大きい」と回答しています。特に企業で中心的な役割を担う50代の労働者にとって、突如としてしかかる介護負担の急増は、業務の継続やメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼしている実態が浮き彫りとなっています。
誠さんは毎週末、義母の自宅に通い、1週間分の清掃や買い出しに追われました。平日も夜間に「財布を盗まれた」と電話で呼び出されることが増え、疲弊していきます。仕事でも出張や長時間の残業を断らざるを得なくなり、職場での評価や立場にも影が差し始めました。妻の由香里さんも申し訳なさから精神的に追い詰められ、家庭内の空気は重くなっていきました。