文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、中学校の不登校生徒は21万6,266人。中学生1,000人あたり67.9人にのぼります。中学時代の大半を不登校で過ごした娘が高校に進学し、ある日、母親に「3,000円」を求めました。家計から見れば決して大きな金額ではありません。しかし、そのお金は母親にとって、これまでとはまったく違う意味を持つお金でした。ある親子の事例から、子どもにかかるお金について考えます。
お母さん、打ち上げに行ってもいい?中学まで不登校だった15歳娘の一言に思わず涙。45歳母が「5,000円」の思わぬ出費を喜んだワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「今日は学校に行けそう?」から始まる毎日

東京都内で暮らすユキコさん(45歳・仮名)は、47歳の夫と高校1年生の娘との3人家族です。共働きで、世帯年収は約850万円です。娘が学校を休みがちになったのは、小学校高学年のころでした。

 

最初は月に数日程度。それが次第に増え、中学校に入るころには、朝になると体調が悪くなったり、制服に着替えても玄関から出られなくなったりするようになりました。

 

「最初のころは、私も『今日は行けそう?』『午後からでも行ったら?』と毎日のように聞いていました。いま思えば、それも娘にとってはプレッシャーだったと思います」

 

学校から連絡が来るたびに落ち込み、同級生が部活動や学校行事を楽しんでいるという話を聞けば、「どうしてうちの子だけ」と思ってしまう。娘と衝突したことも一度や二度ではありませんでした。しかし、不登校が長期化するなかで、ユキコさんの気持ちにも少しずつ変化が生まれたといいます。

 

「高校に行けるのか、大学はどうするのか、将来働けるのか。先のことばかり心配していました。でも、そのうち『今日はご飯を食べられた』『少し笑っている』というだけで十分だと思うようになったんです」

 

中学校の行事にも、ほとんど参加できませんでした。修学旅行も欠席しました。休日に友達と遊びに出かけることもなく、お小遣いを渡してもほとんど使わないまま。親としてはお金がかからない一方、そのことがユキコさんには寂しく感じられました。

 

「職場で『子どもが友達と遊びに行ってばかりでお金がかかる』『部活の遠征代が大変』なんて話を聞くと、正直、羨ましかったです」

「高校には行ってみたい」娘が自分で選んだ進路

転機になったのは、中学3年生のときでした。娘が自分から、「高校には行ってみたい」と言ったのです。

 

ユキコさん夫婦は、学校の知名度や大学進学実績よりも、娘自身が「ここなら通ってみたい」と思えるかどうかを優先しました。何校か説明会に足を運び、最終的に娘が選んだのは私立高校でした。高校進学には、授業料以外にもさまざまなお金がかかります。

 

文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」は、保護者が学校教育や学校外活動のために支出した年間の経費を調査しています。学校教育費には、授業料だけでなく、学用品や教材、通学費、クラブ活動費なども含まれます。一方、2026年度からは、高校の授業料を支援する「高等学校等就学支援金制度」が改正され、所得制限が撤廃されました。保護者の収入状況にかかわらず、一定の要件を満たせば授業料の支援を受けられる仕組みとなっています。

 

ただし、いわゆる「高校無償化」と呼ばれる制度があっても、高校生活に必要なお金がすべてなくなるわけではありません。制服や教材、通学費、部活動費、学校行事、友人との付き合いなど、授業料以外の支出は家庭が負担することになります。ユキコさんの家庭でも、入学にあたって制服や教材などでまとまった出費がありました。それでも夫婦の気持ちは一致していました。

 

「本人が行ってみたいという学校が見つかった。それなら、できる限り応援しようと」

 

もちろん、高校に入学したからといって、それまでの不安がすべて消えたわけではありません。入学直後は毎朝、「今日も行けるだろうか」と気になりました。実際、体調が悪く学校を休む日もあります。ところが、少しずつ変化も見えてきました。

 

「今日、○○ちゃんと話した」「お昼、一緒に食べた」

 

娘の口から、同級生の名前が出るようになったのです。