親の死後、突然発覚するきょうだい間の資産トラブル。十分な貯金があるはずだった実家で何が起きたのか――ある家族の事例から、生前における資産状況の透明化と、トラブルを防ぐための適切な対策について考えます。
「嘘だろ、104円しかない…」〈年金月15万円〉〈貯金1,500万円〉79歳母が急逝。49歳長男が遺品整理で手にした預金通帳に「衝撃の痕跡」 ※写真はイメージです/PIXTA

79歳母の急逝と残された通帳…残高104円の衝撃

東京都内のIT企業に勤務する佐藤健一さん(49歳・仮名)は、地方の実家で暮らしていた母・和子さん(79歳・仮名)を突然の病で亡くしました。

 

「健康面でも金銭面でも、特に心配のない母でした。妹とも同居していたので……」

 

和子さんの生活のベースとなる年金は月15万円ほど受給しており、そのなかで暮らせるようにと、質素倹約を続けてきました。

 

また3年前には、離婚した妹の佐藤由美子さん(52歳・仮名)が出戻り、母と同居していました。

 

葬儀を無事に終えた健一さんは、遺産分割の話し合いを進めるため、実家の片付けと遺品整理に着手しました。和子さんは生前、亡き父の遺産や自身の蓄えを合わせて1,500万円ほどの貯金があると健一さんに語っています。健一さんは、その資金で実家の片付け費用や今後の手続きを賄う予定でした。

 

しかし、仏壇の引き出しから出てきた和子さん名義の銀行通帳を開くと、そこに印字されていた最終残高は、わずか104円。通帳の履歴を確認すると、数年前から毎月のように数十万円単位の現金がATMから引き出されていました。特に和子さんが体調を崩し、外出が困難になった時期から、引き出しの頻度と金額は著しく増加していたのです。

 

驚いた健一さんは、通帳を示しながら同居していた由美子さんに事情を尋ねました。由美子さんは当初、「母さんの生活費や医療費に使った」と主張します。しかし、1,500万円という金額が数年で消えるほど医療費がかかった形跡は見当たりませんでした。

 

健一さんが詳細な領収書や使途の説明を求めたところ、由美子さんは次第に口が重くなりました。

 

同居開始からしばらく経ったある日、自身の認知機能に不安を覚えた母・和子さんは、由美子さんに口座管理を一任します。その後、由美子さんは自分の生活費や洋服代、趣味の費用として口座から引き出していったのです。

 

最高裁判所事務総局『令和7年 司法統計年報(家事編)』によると、全国の家庭裁判所における「後見開始の審判」の新受件数は29,293件(受理総数32,869件、既済のうち認容21,908件)。また、「成年後見人の選任」の新受件数は4,080件、「成年後見監督人の選任」の新受件数は1,407件となっており、家庭裁判所の手続きを通じた財産管理や監督体制の利用が行われています。

 

さらに、同統計における遺産分割事件(認容・調停成立)では、遺産価額5,000万円以下の事案が全体の約77.6%(8,321件中6,457件)を占めており、身近な資産規模においても財産管理の透明性確保と法的保護の重要性が高まっています。