文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、中学校の不登校生徒は21万6,266人。中学生1,000人あたり67.9人にのぼります。中学時代の大半を不登校で過ごした娘が高校に進学し、ある日、母親に「3,000円」を求めました。家計から見れば決して大きな金額ではありません。しかし、そのお金は母親にとって、これまでとはまったく違う意味を持つお金でした。ある親子の事例から、子どもにかかるお金について考えます。
お母さん、打ち上げに行ってもいい?中学まで不登校だった15歳娘の一言に思わず涙。45歳母が「5,000円」の思わぬ出費を喜んだワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「3,000円でいいの?」母が思わず聞き返したワケ

そして迎えた高校の文化祭。娘は準備期間からクラスメートと連絡を取り合い、当日も朝から学校へ向かいました。それだけでもユキコさんはうれしかったといいます。さらに文化祭が終わった日のこと。娘が少し言いづらそうに話しかけてきました。

 

「みんなで打ち上げに行くことになったんだけど、行ってもいい?」

 

「打ち上げ?」とユキコさんは内心戸惑いつつも「もちろん」と答えると、娘は遠慮がちに続けました。

 

「みんなでご飯食べるから、3,000円くらい欲しい……」

 

ユキコさんは一瞬、言葉が出ませんでした。

 

「『3,000円でいいの? 足りないと困るから5,000円持っていきなよ』って言いました。娘は『お年玉の残りがあるから大丈夫』と言ったんですが、ほぼ無理やり渡しちゃいました。泣いたら娘に嫌がられると思って我慢しましたけど、本当は泣きそうでした」

 

中学生のころには想像できなかった光景でした。娘が友達と文化祭を楽しみ、そのあと一緒にご飯を食べに行く。そして、そのためのお金を親に頼む。多くの家庭なら、ごくありふれた出来事かもしれません。

 

「高校生になったら交際費もかかるし、お小遣いも増えるだろうなとは思っていました。でも、まさか『お金がかかってうれしい』と思うとは考えてもいませんでした」

 

結局、その日、娘は5,000円を持って出かけました。夜、帰宅した娘は楽しそうにスマートフォンの写真を見せながら、友達との出来事を話してくれたそうです。

「お金がかかってうれしい」と思えた5,000円

高校に進学したことで、娘の不登校がすべて解決したわけではありません。現在も学校を休む日はあり、ユキコさん自身、「もう大丈夫だとは思っていない」と話します。それでも、中学時代には学校行事への参加も難しく、友達と遊びに出かけることもほとんどなかった娘が、高校では文化祭に参加し、自分から「友達と打ち上げに行きたい」と言った。そのために必要になったのが、今回の5,000円でした。

 

「高校生になったら交際費もかかるし、お小遣いも増えるだろうなとは思っていました。でも、まさか『お金がかかってうれしい』と思うとは考えてもいませんでした」

 

家計のお金には、さまざまな使い道があります。老後や将来に備えて貯蓄する、NISAなどを活用して投資に回す。一方で、子どもがいる家庭では、塾や習い事、部活動、進学など、その時期だからこそ必要になる支出もあります。限られた収入のなかで、将来のためにどれだけ残し、今の生活や子どもの経験にどれだけ使うのか。これは、多くの家庭にとって悩ましい問題でしょう。

 

たとえば5,000円を投資に回せば、将来の資産形成につながる可能性があります。一方で、その5,000円を今しかできない経験のために使うという選択もあります。どちらかが一律に正しいというものではなく、家族の状況や、そのとき何を大切にしたいかによって判断は変わります。

 

将来のためにお金を残すことは大切です。同時に、必要なときに使うことも、お金の役割の一つです。ユキコさんにとって今回の5,000円は、単なる交際費ではありませんでした。娘が友人と過ごす時間のために、今だからこそ使いたいと思えたお金だったのです。

 

 

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