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58歳ベテラン社員が侵した小さな計算ミス
長年会社を支えてきたベテラン社員であっても、50代後半を迎えると体力や集中力の変化に直面します。かつて自身が指導した若手に助けられたとき、人は自身の変化とどう向き合うのか。ある男性の事例から考えます。
中堅メーカーの営業推進部で働く佐藤和彦(58歳・仮名)さんは、勤続35年のベテラン社員。現在の年収は800万円で、かつては部門のトッププレイヤーとしてチームを牽引する実績を誇りました。若手社員の指導や育成にも長年携わっており、社内での信頼も厚い存在です。
しかし、50代後半を迎えてから、佐藤さんは自身のパフォーマンスの変化を自覚し始めていました。夕方になると視界がかすみ、細かい数字のデータ入力作業において誤りが発生する頻度が増加したのです。本人は確認を行っていたつもりでしたが、無意識の疲労が影響を及ぼしていました。
異変が顕在化したのは、ある週の午後でした。佐藤さんは、主要取引先に提出する重要案件の見積書データを作成していました。そこで、合計金額の数値で桁を1つ入力ミスするエラーを犯します。作成されたデータは社内サーバーの共有フォルダーへそのまま保存されました。
その直後、佐藤さんが一時的に離席した際、かつて自身が指導した部下の高橋陸(26歳・仮名)さんがデータの違感に気づきます。高橋さんは指摘することなく、静かに数値の修正作業を行いました。そして、正しい金額のデータをそろえて顧客へ送信する手続きを完了させます。
厚生労働省『令和5年高年齢労働者の安全衛生対策に関する調査』によると、50代後半以上の労働者が職場で感じる課題として、「体力や持久力の低下」と並び「注意や集中力の維持の難しさ」を挙げる割合が約4割に達しています。
加齢に伴う視力低下や疲労の蓄積は、正確性が求められる事務作業でのエラー率を高める主要な要因とされています。多くの企業が、高年齢社員の作業環境見直しやダブルチェック体制の強化を推進しています。
高橋さんの対応により、取引先とのトラブルは未然に回避されました。しかし、佐藤さんは自らのミスを部下に密かにフォローされていた事実を、後から知ることになります。