住宅ローンの金利上昇に伴い、毎月の返済負担が増加する家庭が増えています。高所得世帯であっても、予期せぬ固定費の増額は家計を圧迫し、精神的な余裕を奪う大きな要因となります。ある夫婦の事例から、家計の危機が夫婦関係の亀裂へと発展する背景を考えます。
「嫌なら出ていけ!」金利上昇と役職定年でローン負担激増…妻に当たり散らした〈58歳会社員〉の末路 ※写真はイメージです/PIXTA

経済的ストレスの噴出と居間に置かれた離婚届

返済負担の増大と将来への不安は、勝利さんの感情を不安定にさせました。夜、帰宅した勝利さんは日用品のレシートを厳しくチェックし、わずかな支出を見つけると里美さんを問いただしました。「誰の稼ぎで暮らせていると思っているんだ」「嫌なら出ていけ」といった暴言を浴びせる機会が増えていきました。

 

感情的な攻撃を受ける日々が重なり、里美さんは次第に口を閉ざすようになりました。家庭内の会話は途絶え、冷ややかな空気が居間に漂う日が続きました。勝利さんは自身の言動を「家計を守るための当然の注意」だと考え、里美さんが抱く精神的苦痛を理解していませんでした。

 

厚生労働省『人口動態統計(令和7年)』によると、同居期間が20年以上の夫婦における離婚件数は3万9,886組に達し、全離婚件数に占める割合は約22.3%を記録しています。また、最高裁判所『令和7年 司法統計年報』では、妻が離婚を申し立てる主な動機として「性格が合わない」に続き、「精神的に虐待する」や「生活費を渡さない」といった経済的・精神的負荷が上位に挙げられています。環境の変化に伴う金銭的ストレスが、長年連れ添った夫婦関係の破綻要因となっている実態が確認できます。

 

ある日の深夜、勝利さんが仕事から帰宅すると、リビングの灯りは消えていました。ダイニングテーブルの上には、里美さんの署名と押印がなされた離婚届が置かれていました。添えられた手紙には「これ以上の同居は限界です。弁護士を通じて財産分与と住宅ローンの精算を求めます」と記されていました。

 

住宅ローンの金利上昇と収入減少という危機を前に、相手に責任を転嫁し続けた代償は、あまりにも大きなものでした。