※写真はイメージです/PIXTA
実家を訪ねると、玄関の鍵が開かず…
数日後、英樹さんは実家を訪ねました。ところが、以前の鍵では玄関が開きません。母に連絡すると、こう言われました
「鍵を替えたの」
「もう勝手に来ないで」
英樹さんは驚きました。300万円を失わずに済んだことで、母も安心していると思っていたからです。
「母さんのお金を取ろうとしたわけじゃないよ」
「詐欺に遭わないようにしただけだよ」
それでも久美子さんは譲りませんでした。
「親心を疑うの?」
自分の息子を助けるために銀行まで行った。その自分の行動を、息子から否定されたことが許せないのだと言います。
久美子さんにも少々意地になっている部分があったのでしょう。ここで反論すると余計に事態がこじれると判断した英樹さんは、それ以上言い返すことなく、いったん帰路につくことにしました。
内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らし(単身世帯)は増加の一途をたどり、2050年には男性の26.1%、女性の29.3%に達すると推計されています。また、同白書の国際比較調査では、同居家族以外に「友人」や「近所の人」を頼れると答えた日本の高齢者は1割強(友人13.7%、近所12.9%)にとどまり、相談相手の少なさが目立ちます。
単身化が進むなか、親を思う行動であっても自尊心や心情への配慮を欠くと、かえって家族間の心の断絶を招くことも。金銭的被害を防ぐだけでなく、親の尊厳を守る丁寧な対話と寄り添いが重要です。