(※写真はイメージです/PIXTA)
「今度、夫も一緒に行っていい?」から始まった
カオリさんには、女子大時代から仲のいい友人が3人います。卒業して20年以上経った現在も、3ヵ月に1回ほど4人で集まり、ランチや飲み会を楽しんできました。結婚している人もいれば、独身の人もいます。仕事、恋愛、夫婦関係、親のことまで、長い付き合いだからこそ話せることがありました。
ある日、ユウコさん(44歳・仮名)が聞いてきました。
「今度、アツシも一緒に行っていい?」
アツシさん(47歳・仮名)はユウコさんの夫。カオリさんたちも結婚式やホームパーティーなどで何度か会ったことがあります。
「そのときは誰も嫌だなんて思わなかったです。『アツシさん久しぶり!』って感じでした」
実際、最初の1回は大いに盛り上がりました。ところが、次の女子会にもアツシさんは参加。そして、その次も。
「いつの間にかユウコから確認すらなくなって、5人で集まるのが当たり前になっていました」
いつの間にか友人の夫を接待していた
アツシさんがいることで、4人の会話は少しずつ変わっていきました。独身の友人が恋愛相談をしたくても、友人の夫が隣にいれば話しづらい。夫婦の愚痴なども同様です。しかもアツシさんは、かなりの話好きでした。仕事、取引先、人脈の話――。ワインを頼めば、今度は産地や品種についてウンチクをとうとうと語ります。
「気づいたらアツシさんがずっとしゃべっていて、私たち4人が『へえ』『すごいね』って相槌を打っているんです」
ある日、カオリさんは心のなかで思いました。
「ここ、キャバクラだっけ?」
4人で話すために集まっていたはずが、いつの間にかアツシさんの話を女性4人で聞く会になっていました。
本来なら約4,800円、なのに会計は6,300円
そして、3人の不満が決定的になったのがお会計でした。その日の会計は5人で約3万1,500円。料理は全員でシェアし、合計約1万9,000円。1人あたり約3,800円です。女性陣はソフトドリンクやグラスワインを1杯頼む程度で、飲み物代を含めても1人あたり約4,800円でした。
一方、アツシさんはビールに加え、ボトルワインも注文。しかも飲んでいたのはほとんどアツシさんだったといいます。アツシさんが飲んだアルコールは約8,500円分。
料理代を均等に分け、自分の飲み物代をそれぞれ負担すると考えれば、女性陣は1人約4,800円、アツシさんは約1万2,300円になります。
ところがアツシさんは伝票を見ると、さらりと言いました。
「3万1,500円だから、5人で割って6,300円ね」
カオリさんは思わず伝票を見直しました。
「ワイン、ほとんどアツシさんが飲んでたよね……って。でも、その場で揉めるのも嫌で、結局みんな6,300円ずつ払いました」
女性4人は、それぞれ本来の飲食分より約1,500円多く負担した計算です。アツシさん夫妻と別れたあと、3人の不満が一気に噴き出しました。
「あれだけワインのウンチク語って、自分でほとんど飲んだのに割り勘なんだ。正直セコいよね」「あんなに仕事の話でドヤってたのに、自分が飲んだ分も出さないって、ちょっとダサくない?」「ただでさえ物価高なのにふざけるんじゃないよ」
そしてカオリさんが言いました。
「というか、なんで私たち、割り勘でアツシさんを接待しなきゃいけないのよ。ユウコがほかでも似たようなことやっていたらさすがに友達なくすから私から言うわ」
3人が求めていたのは、「男性だから奢ってほしい」ということではありません。
「自分が多く飲んだなら、その分は自分で払えばいい。一番しゃべって、一番飲んで、私たちはずっと相槌を打って、それで会計まで平等って。『私たち何しに来てるんだろう』と思いました」
総務省「家計調査」によると、2025年の二人以上世帯の消費支出は月平均31万4,001円で、前年から名目4.6%、実質0.9%増加しました。なかでも「外食」への支出は月平均1万7,963円で、物価変動の影響を除いた実質でも前年比2.3%増。「一般外食」に限ると月平均1万7,343円で、実質2.7%増となっています。
外食に使うお金が増えるなか、友人とのランチや飲み会にかかる数千円も、決して小さな負担とはいえません。まして、自分がほとんど口にしていない酒代まで毎回負担するとなれば、「たった1,500円の差」とは感じられない人もいるでしょう。
カオリさんたちが引っかかっていたのは、単純な金額の大小ではありません。自分たちのお金と時間を使う場が、いつの間にか「アツシさんを楽しませる会」になっていたことでした。