義実家への帰省時、遠慮や気遣いから本音を言えずモヤモヤを抱える人は多いのではないでしょうか。ある女性の事例から、家族が無理なく向き合うヒントを探ります。
「ようやく本音が言えました」…義実家の台所に立つ48歳女性、〈年金月15万円〉79歳義父への「痛烈なひと言」 ※写真はイメージです/PIXTA

「私はお義母さんじゃありません」その後に変わった食卓

その年の年末も美穂さんは朝から台所に立っていました。

 

煮物を作り、焼き魚を用意し、味噌汁を作りました。食卓についた昭夫さんは、いつものように味噌汁を一口飲みました。

 

そして、「母さんの味とは、やっぱり違うな」とポツリ。美穂さんは、しばらく黙っていました。手をとめ、初めて言いました。

 

「お義父さん、私はお義母さんじゃありません。同じ料理は出せませんよ」

 

美穂さんが義父に本音を伝えたのは、それが初めてでした。昭夫さんも怒りませんでした。しばらくして、「そうだな。悪かった」と頭を下げたといいます。

 

翌朝、美穂さんは昭夫さんと一緒に台所に立ちました。美穂さんは記憶の中にある“義母の味”を思い出しながら、味噌汁の作り方を昭夫さんに教えます。完成した味噌汁を一口飲むと、「おお、母さんの味に近い」と驚きの一言。

 

「10年以上前のことなので、本当に義母の味に近いのか分かりませんが、お義父さんが『近い』というなら、近いんでしょう」

 

懐かしい味に遭遇した昭夫さんは、「簡単だ。毎日作る」と一人、盛り上がっています。

 

しかし、「お義父さん、お義母さんのレシピ、今のお義父さんには味が濃すぎるんです。血圧を考えて、週に1度とか、月に1度とかにしないと、すぐにお義母さんのところにいくことになりますよ」とピシャリ。こんなにはっきりと言ったのも初めてだったといいます。

 

「お義父さんの気持ちもわかります。ただ、元気でいてくれないと困りますから」

 

内閣府の『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査結果』によると、孤独感を抱いている人がその影響を受けた出来事として「家族との死別」を挙げた割合は15.3%に上ります。

 

また、一人暮らしの男性(男性単身者)において孤独感を「しばしばある・常にある」と回答した割合は12.8%に達しており、配偶者を亡くした高齢男性の多くが深い喪失感や孤独を抱えている実態が窺えます。