親が高齢になると、実家の片付けや介護だけでなく、先祖代々の墓を誰が守るのかという問題も現実味を帯びてきます。きょう言がいれば安心とは限りません。距離や仕事、家族の事情が絡み、思いがけない負担を一人に託すこともあります。ある男性の事例を見ていきます。
「お墓、継いでくれるかな?」〈月収48万円〉45歳次男、82歳母〈まさかの懇願〉に絶句 ※写真はイメージです/PIXTA

「お墓、継いでくれる?」母からの突然のお願い

会社員の佐藤大輔さん(45歳・仮名)。今年のお盆休みは、妻と子どもを残して一人で実家に帰省しました。移動や滞在の負担を考慮し、セパレート帰省を行ったのです。

 

実家では82歳の母・佐藤陽子さん(仮名)が暮らしています。父は数年前に亡くなりました。

 

会社では中間管理職として忙しくしている大輔さん。月収は48万円ほど。実家は隣の県とはいえ、帰ることができるのは年に2〜3回ほどだといいます。

 

今回は母の様子を確認したら、1〜2泊程度して帰るつもりでした。

 

帰省した当日の夕食。母から突然、「ねえ、お墓、継いでくれない?」と相談が。大輔さんは、すぐには意味が分かりませんでした。

 

「お墓って……兄貴がいるじゃん」

 

大輔さんには3歳上の兄がいます。大輔さんよりもさらに実家から離れた県で暮らしていますが、当然、お墓は兄が継ぐものだと思っていました。ところが母は、「お兄ちゃんには何度も断られて……」と言います。

 

「帰省するにも時間がかかるし、そんなに帰ってくることはできない。実家近くの墓を管理するのは無理だというのよ」

 

お墓は実家から車で20分ほどの寺にあります。

 

父が亡くなったあと、母が一人で墓参りを続けてきました。ただ、82歳になり、これまでと同じように通い続けることには不安があります。

 

厚生労働省『2025年(令和7年)人口動態統計』によると、2025年の死亡数は158万9,489人。高齢化が進むなか、親世代の死後に、墓や納骨先について家族が判断する場面も増えています。墓の問題は、親が亡くなってから初めて考えればいいものとは限りません。元気なうちに、誰が管理するのかを家族で話しておくことが重要です。

 

「お兄ちゃんは『大輔も大変なんだから、墓じまいをしたら』っていうのよ。でもそれだけは嫌なの。私はお父さんと同じお墓に入りたいの」

 

大輔さんは戸惑いました。

 

墓を継ぐこと自体が嫌なわけではありません。ただ、兄より実家に近いところに住んでいますが、自宅から実家までは電車を乗り継いで2時間以上かかります。墓参りだけでなく、寺との付き合いや管理料なども必要になります。

 

「俺が継ぐってことは、ずっとこっちに来ないといけないの?」

 

そう聞くと、母は「毎月じゃなくてもいい」と答えました。

 

しかし大輔さんには、簡単な話には思えませんでした。

 

墓を継ぐということが、墓石を引き継ぐだけではないことを、このとき初めて具体的に考えたからです。