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「退職金1,500万円は残しておこう」そう話していた夫
「退職金は、老後のために取っておこう」
夫婦でそう話したのは、夫が65歳で定年を迎えたときでした。
東京都内で暮らしていた佐藤美智子さん(72歳・仮名)と夫の浩二さん(享年74歳・仮名)。2人の子どもはすでに独立しています。
浩二さんは会社員として40年以上働き、退職時に約1,500万円の退職金を受け取りました。美智子さんの記憶では、夫はそのお金を使うつもりはないと言っていました。
「老後は何があるかわからない。保険として、このお金(退職金)は手を付けないでおこう」
夫婦の年金収入は、浩二さんの生前は月約28万円。美智子さん自身の年金は月13万円ほどでした。
ところが、浩二さんが亡くなったあと、遺品整理を進める中で銀行口座などを確認していた美智子さんは、想定していた金額との違いに気づきます。
老後資金として1,000万円程度の預貯金がありました。これは2つの口座で管理し、年金だけで足りないときは、ここから取り崩していました。そのため、家計管理を任されている美智子さんが管理していました。
そして、退職金が入った口座。使う予定のないお金なので、強いていえば浩二さんが管理していました。
以前言っていた言葉を信じるのであれば、退職金が入っている口座には1,500万円ほどが残っているはず。しかし通帳の残高は数千円。
「1,500万円は、どこにいったの……」
取り崩しのための貯金には500万円ほどのお金があり、退職金に手を付ける必要はありません。しかし、あるはずのお金がないのです。
総務省の「家計調査」によると、2025年の二人以上世帯では、1世帯当たりの貯蓄現在高は平均2,059万円でした。ただし、平均を下回る世帯が全体の約3分の2を占めています。世帯主が65歳以上の世帯でも、貯蓄保有世帯の中央値は1,777万円である一方、300万円未満の世帯が14.9%あります。老後資金は「平均額」だけでは実態が見えにくいのです。
通帳を確認していくと、一定額が毎月出ているわけではないことがわかりました。数十万円単位の振り込みが、何度も繰り返されていました。相手先の名前を見ても、美智子さんには心当たりがありません。