義実家への帰省時、遠慮や気遣いから本音を言えずモヤモヤを抱える人は多いのではないでしょうか。ある女性の事例から、家族が無理なく向き合うヒントを探ります。
「ようやく本音が言えました」…義実家の台所に立つ48歳女性、〈年金月15万円〉79歳義父への「痛烈なひと言」 ※写真はイメージです/PIXTA

「もっと塩味がほしい」…亡き妻と比べ続ける義父

都内で働く、野村美穂さん(仮名・48歳)。月に1回程度、夫や子どもたちと一緒に義実家に行くのが習慣でした。

 

その義実家では、義父・野村昭夫さん(仮名・79歳)が、10年前に義母が亡くなって以来、一人暮らしをしています。

 

生活のベースと年金は月15万円ほど。それだけで月の生活費を回すことができています。貯蓄も十分にあるので、「ひとりでも心配はない」と、昭夫さんはよく強がるのだとか。

 

そんな実家で美穂さんは毎回台所に立ちます。義母が亡くなってから、誰も食事を作ってくれないので、自然と台所に立つようになりました。夫も手伝わないわけではありませんが、買い物や献立を考えるのは美穂さんが中心です。

 

ある日の夕食。美穂さんが作った味噌汁を、昭夫さんは一口飲みました。

 

「うん。でも、もう少し塩気と出汁がきいていたんだよな。母さんのは……」

 

悪気があって言っているわけではないことは、美穂さんにも分かっていました。別の日には煮物を食べて、「母さんのは、もう少し甘かったな」と話します。

 

食卓では、義母の料理の話がたびたび出ました。

 

美穂さんは、そのたびに「そうなんですね」と返しました。義父にとっては、亡くなった妻との思い出を話しているだけです。一方で、美穂さんにとっては、自分が作った料理を毎回比べられているようにも感じ、いい思いはしなかったといいます。

 

「お義母さんの味にはかなわないんですよね」

 

冗談めかして言ったこともあります。

 

すると昭夫さんは、「そういう意味じゃないんだよ。ただ、母さんの味が懐かしくてな」と返します。

 

令和2年国勢調査のデータによると、70代後半(75〜79歳)男性の死別割合は10.6%(約10人に1人)であり、死別男性の人数そのものは70代(前後あわせて約62万人)が最も多いボリューム層です。

 

一方で、同年代女性の死別割合(34.3%)と比べると男性の割合は低く、周囲に同じ境遇の同性友人が少ない傾向にあります。昭夫さんの言葉の裏には、妻を亡くした喪失感が、未だしこりとなって昇華できていないさまが窺えます。