(※写真はイメージです/PIXTA)
「娘の家は大変だから」と誘っていた母
トミコさんには思い当たることがありました。長女一家は、長男一家ほど経済的に余裕がありません。長女はパート勤務で、夫の収入もそれほど高くないと聞いています。
そのためトミコさんは、
「せっかくダイスケたちが来るんだから、あなたたちも来ればいいじゃない」
と、むしろ積極的に長女一家を誘っていました。
みんなで食事をすれば、長女一家も少し楽ができる。そんな親心もあったといいます。
しかし、今思えば大きな勘違いでした。
「娘の家は大変だから、みんなで助ければいいと思っていたんです。でも、“みんなで”じゃなかったんですよね。息子夫婦だけに負担させていました」
トミコさんは、長女一家の分を誰が払っているのか確認したことすらありませんでした。自分が声をかけ、娘一家がやって来る。食事が終われば、長男が会計を済ませている。
その光景を何年も当たり前のように見ていたのです。
「ちゃんと稼いでるんだから、そのくらいいいじゃない」
「そんなふうになったのは、私にも責任がある」
そう痛感したトミコさんは後日、長女に尋ねました。
「あなたたちの食事代、ダイスケがずっと払っていたの?」
長女は悪びれる様子もなく答えたといいます。
「そうだよ。でも、ダイスケたちのほうがお金あるじゃない」
トミコさんは、その言葉に驚きました。
「ダイスケがお金を持っているからって、あなたたちの分まで払う義務はないでしょう」
すると長女は、
「別にダイスケが嫌だって言ったわけじゃないし。ダイスケはいい大学に行って、ちゃんと稼いでるんだから、そのくらいいいじゃない」
と不満そうに返したそうです。
反省する様子のない長女を前に、トミコさんは言葉を失いました。
「長女がたかり体質になってしまったのは私たちにも責任がある」
長男が何も言わなかったことと、納得していたことは同じではありません。
「娘の家は大変だから」と気遣うあまり、自分自身が長女を甘やかし、結果的に長男夫婦へ負担を押しつけていたのかもしれない――。
トミコさんは初めて、これまでの家族のあり方を振り返ったといいます。
世帯年収1,200万円と聞くと、「経済的にかなり余裕がある家庭」という印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、年収がそのまま自由に使えるお金になるわけではありません。
総務省「家計調査」の年間収入階級別データによると、2025年の年収1,000万~1,250万円の勤労者世帯では、1か月あたりの可処分所得は約70万6,000円。一方、消費支出は約44万4,000円で、税金や社会保険料などの「非消費支出」は約18万円にのぼります。
さらにダイスケさん夫婦には、小学生の子どもが2人います。
文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」によると、子ども1人あたりの年間学習費総額は、公立小学校で約33万6,000円、私立小学校では約182万8,000円です。
住宅費や日々の生活費に加え、これから中学、高校、大学と教育費が続くことを考えれば、「世帯年収1,200万円あるのだから、親族の食事代くらい払って当然」とはいえないでしょう。
「払えること」と「払って当然であること」は、まったく別の話です。
トミコさんは振り返ります。
「私は、娘に親切にしているつもりでした。でも実際には、息子夫婦のお金を使って娘にいい顔をしていただけだったんですよね」
今年の誕生日は、シルバーウィークを避けて、長男一家と改めて食事をすることになりました。
長女にも、
「これからみんなで食事をするときは、それぞれの家族の分は自分たちで払いましょう。私たちも自分たちの分は自分で払うから」
と伝えたそうです。
「息子たちが今年来ないと言わなかったら、ずっと気づかなかったかもしれません。家族だからこそ、お金のことを曖昧にしてはいけないんですね」
家族だから助け合う。その考え自体は決して悪いものではありません。ただし、「助け合い」が特定の誰かだけの負担になっていないか。親世代も、子ども世代も、ときどき立ち止まって確認する必要がありそうです。
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