かつて「一生安泰」の代名詞だった公務員。しかし高額住宅ローンや教育費、物価高が重なり、家計窮迫に苦しむ世帯が増えています。高い給与水準の裏で、なぜ生活が破綻寸前に追い込まれるのでしょうか。ある事例から、一見恵まれた公務員世帯が直面する家計の厳しいリアルと老後リスクに迫ります。
「公務員と結婚すれば安泰」は嘘でした…〈手取り41万円・53歳国家公務員〉に向けられた妻の怒号。〈6,000万円マンション・フルローン購入〉の末路 ※写真はイメージです/PIXTA

定年延長と「給与激減」という逃げられない現実

現在の貯蓄は300万円ほど。その半分は、次男の大学進学が決まったら消えてしまいます。そんな家計に、さらなる現実が迫っています。60歳以降の給与激減です。

 

国家公務員は60歳に達すると、給与水準の大幅な低下が待ち受けています。前述の調査結果でも、行政職(一)の60歳以上の平均給与は50代に比べて著しく抑制される実態が示されています。

 

斉藤さんの場合、60歳を迎えると手取り収入は月額25万円程度まで落ち込む見通しです。しかし、住宅ローンの返済は65歳まで残っています。退職金で一括返済する計画でしたが、近年の退職金制度の改定により、受給額は当初の目論見から数百万円単位で減少しています。教育費の負担が終わっても、月22万円の住宅費を払い続ければ、老後資金を作る余裕など皆無です。

 

この現実を前に、夫婦関係も良好とはいえない状況が続いています。

 

夫婦で家計のことについて言い争いになったときのこと。斉藤さんも直美さんも徐々にヒートアップしていき、直美さんが「公務員だったら一生安泰だからって、言ってたじゃない! 詐欺じゃないこんなの!」と言い放ちました。斉藤さんは何も言い返せなかったといいます。

 

「覚えていました。結婚するとき、公務員だから苦労はさせない……そう言ったんです、私」

 

そう語る斉藤さん。「あと5年。次男が大学を卒業するまで耐えることができれば。あとは自分たちのことだけを考えたらいいので……」と漏らします。しかし、教育費がひと段落しても、5年後には60歳以降の給与激減が待ち受けています。老朽化するマンションの修繕費はさらに家計を圧迫する可能性が高いでしょう。何の手も打たずに、問題を先送りしていることと変わりありません。

 

かつて「絶対の安定」を約束された公務員であっても、無計画なローンの前では平穏な老後は望めません。根本的な解決策を持たないまま、斉藤さんの終わりの見えない我慢の日々が続きます。