(※写真はイメージです/PIXTA)
70歳からの新しい仕事
きっかけは半年前。実家の片付けを手伝いに来た孫(アカネさんの息子)に教わり、押し入れに眠っていた昭和のおもちゃや古本のコレクションをフリマアプリに出品したことでした。オサムさん世代にとっては「ただの古いガラクタ」だったものが、マニアのあいだで高値で次々と落札されたのです。亡くなった祖父のコレクションだったレトロなおもちゃや、古いオーディオ機器が数十万円の臨時収入に変わりました。
さらに面白いことに、丁寧な梱包と昭和の知識を生かした誠実な商品説明が評判を呼び、いまや近所の高齢者仲間から「うちの押し入れの不用品も売ってくれ」と頼まれる『シニア専門のフリマ代行名人』になっていたのです。
「近所のお祝い返しで余ったタオルとか、古いカメラを代わりに売ってあげたら、喜ばれてね。お礼にってお金を受け取るのは悪いから、野菜や魚やお菓子をいただいたんだ。食費は減ったし、フリマの売上金で毎月数万円のプチ収入もある。なにより、若い購入者さんから『大切にします!』って感謝されると嬉しくてたまらんよ」
スマホの画面を見せながら目を輝かせる父の姿に、アカネさんは安堵と呆れが混ざった溜め息をつくしかありませんでした。
シニア世代の家計防衛
厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額は、基礎年金含めて15万289円。男性に限ると16万9,967円です。タカシさんのように自営業の期間が長かったり、未納期間があったりする単身シニアの場合、「月額一桁万円」という水準は決して珍しくありません。
一方、総務省『家計調査(家計収支編)2025年』によると、65歳以上の単身無職世帯における毎月の消費支出は平均約14万8,445円となっており、可処分所得11万8,465円とのあいだには毎月3万程度の不足が発生する計算になります。子どもからの仕送りや過去の貯蓄取り崩しに頼らざるを得ない構造があるなかで、自力で月数万円の原資を生み出す取り組みは、大きな家計防衛となります。
かつては「若者の文化」であったフリマアプリですが、現在ではシニア世代にも急速に浸透しています。
総務省『令和6年版 情報通信白書』によると、70代のスマートフォン保有率は8割を超えており、インターネットを通じて中古品の売買や情報発信を行う高齢者が増加しています。メルカリ等の事業者データにおいても、60代以上の利用者は「生前整理」「実家の片付け」をきっかけに始める人が多く、昭和レトロなおもちゃ、古本、レコード、昔のカメラといった「本人は価値がないと思って放置していた不用品」が高値で取引されるケースが目立っています。
不用品販売や代行作業がもたらす最大のメリットは、単なる金銭的収入にとどまらない「社会的孤立の防止」と「生きがい創出」です。
内閣府『令和6年版 高齢社会白書』によると、高齢者が生きがいを感じる瞬間として「人と交流しているとき」や「自分の知識や経験が人の役に立っていると感じるとき」が高く挙げられています。タカシさんのように、近所の人から頼りにされて感謝の品(新鮮な食材等)をもらったり、購入者から「大切にします」と評価されたりする体験は、脳の活性化や認知機能低下の防止、老後うつの予防にも効果的に作用するでしょう。
親が「お金がないから無理をしているのではないか」と決めつけるのではなく、現状のやりくりや楽しみ方を尊重することも大切です。
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