限られた年金で生活するなか、大きな負担を押してまで家族や孫へ金銭的援助を続けてしまう高齢者は少なくありません。その裏にある意識とは。ある68歳女性の事例から、高齢期における家計の現実と心の孤立について考えます。
「孫に利用されているだけでした…」〈年金月14万円〉68歳女性、敬老の日を前に感じた絶望のワケ ※写真はイメージです/PIXTA

いつも祝ってくれた敬老の日だったが

今年の夏、和美さんは長女から連絡を受けました。

 

「お母さん、9月の連休なんだけど、今年は日取りがいいから家族で旅行に行こうと思って」

 

実は9月が誕生日の和美さん。敬老の日に合わせてお祝いをする、というのが毎年の恒例行事でした。しかし今年は日取りがいいからと家族旅行を優先するとのことでした。特に和美さんの誕生日や敬老の日についての話はありませんでした。

 

和美さんは少し間を置いて、「そう」とだけ答えました。

 

電話を切った後、ふと思ったといいます。

 

「私、うまいように利用されているだけでは……」

 

颯太くんが「ばあばに会いたい」と言ってくれるのは、会えばお小遣いをくれるからではないか。長女夫婦が連絡をくれたり、会いに来てくれるのは、孫にお金がかかるタイミングがほとんど――。

 

「お母さんに買ってもらおうよ」

 

そんな会話をしてから連絡をよこしてくるに違いない。そんな疑念が大きくなっていきました。

 

ある日、和美さんは長女に尋ねます。

 

「私のこと、何だと思っているの?」

「何よ、いきなり。お母さんは、お母さんでしょ」

「都合のいい人と思っているんじゃないの?」

「誰がそんなことを言ったのよ

 

ちょっとした口喧嘩になりました。

 

「誕生日を蔑ろにされただけで、こんなに絶望的な気持ちになるなんて……たまたま日取りがよかったから家族旅行と、浮かれているだけかもしれません。でも普段から利用されているだけと考えてしまうんです」

 

内閣府『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査』によると、同居人がいない単身女性で孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した割合は6.9%。さらに、自身の孤独感に影響を与えた出来事として「一人暮らし」(15.2%)や「家族との死別」(11.3%)が多く挙げられており、和美さんのように夫と死別し単身となった高齢期は、孤独を深めやすい実態があります。

 

経済的負担を重ねてでも家族との絆を維持しようとする背景には、孤立への強い不安があるのかもしれません。金銭に依存しない対等な関係の再構築や、地域の相談窓口など社会的頼り先の確保が重要といえそうです。