共働きで世帯年収約1,350万円。夫婦ともに忙しく働き、普段は家事も分担している美紀さん(42歳・仮名)ですが、夫の実家へ帰省すると、なぜか女性ばかりが台所に立つことに違和感を抱いていました。そんななか、夫から何気なく言われた「エプロン持って行ってね」の一言で不満が爆発。親世代の負担も含め、家族の集まりに残る“家事の役割分担”について考えます。
「エプロン持って行ってね」ってどういう意味? 世帯年収1,350万円の〈42歳共働き妻〉、義実家への帰省前に夫から言われた一言に違和感を覚えたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「じゃあ旦那さんにも持って行かせれば?」

後日、美紀さんが友人たちにこの話をすると、一人が笑いながら言いました。

 

「シルバーウィークは美紀の実家に行くんでしょ? 旦那さんにも『エプロン持って行ってね』って言えば?」

 

その場は大笑いになりましたが、美紀さんは「それ、本当にやってみようかな」と思ったそうです。

 

考えてみれば、美紀さんの実家では健太さんは完全に“お客さん”です。母親から「座っていて」と言われればそのままくつろぎ、美紀さんと母親が食後の片付けをしていても、手伝うことはほとんどありません。

 

「夫はお客さんなんだと思っていました。でも、それなら私だって夫の実家ではお客さんじゃないの?って」

 

そこで美紀さんは、シルバーウィークの帰省前、夫にまったく同じ言葉を返すつもりだといいます。

 

「『うちの母も大変だから、エプロン持って行ってね』って。たぶん『俺が?』って言うでしょうね。そのときに『私もそう思ったよ』って言いたいです」

 

「夫用のエプロンまで買っておこうかな」と笑う美紀さん。

 

大喧嘩がしたいわけではありません。自分が無意識に妻へ求めていた役割に、一度気づいてもらいたいといいます。

「私が代わりにやる」だけでは解決しない

一方で、美紀さんは義実家の習慣を一気に変えるのは難しいとも感じています。

 

長年、親戚が集まれば義母が料理を用意し、女性たちが台所を手伝う。それが当たり前になっているからです。

 

だから最近は、別の方法も考えるようになりました。

 

「今後は、みんなで食べられるオードブルをこちらで用意したり、外食にして私たちが代金を負担したりするのもいいかなと思っています。いつも手土産は持っていくんですけれどね。次はみんなで食べられるお寿司を買って行こうかなと思っています。夫は『そこまでしなくても』って言うかもしれないですけど」

 

義両親も年齢を重ねています。孫に会えるのを楽しみにしていても、大人数分の料理を用意し、片付けまで担うのは、体力的にも経済的にも負担になります。それは美紀さんの母親も同じです。

 

「お義母さんに全部やってもらうのも違うし、だからといって私が代わりに全部やるのも違うと思うんです。そもそも、家族みんながラクに集まれる方法を考えたほうがいいですよね」

 

夫にも台所に立ってもらう。外食や中食を取り入れる。集まる側がお金を出す。

 

そうした小さな変化があれば、夫だけでなく、ずっと座っている父親世代にも「なぜ自分は手伝わないのか」と考えるきっかけが生まれるかもしれません。

共働きでも残る「家事は女性」の役割分担

美紀さん夫婦のように、共働きで普段は家事を分担していても、帰省や親族の集まりになると、昔ながらの性別役割が顔を出すことがあります。

 

内閣府『令和7年版 男女共同参画白書』によると、6歳未満の子どもがいる夫婦では、すべての都道府県で妻の家事関連時間が夫より210分以上長くなっています。全国平均では、妻の家事関連時間は1日446分、夫は113分。一方、仕事関連時間は妻169分、夫488分です。

 

内閣府も、こうした状況の背景には「男性は仕事、女性は家庭」という固定的な性別役割分担が依然として残っていることがうかがえるとしています。

 

今回興味深いのは、健太さんが普段から「家事は女性がするもの」と考えているわけではない点です。自宅では料理も掃除もします。それでも自分の実家へ帰るとなると、「母親を手伝うのは妻」という発想が自然に出てきました。

 

固定的な性別役割分担は、「女性なのだから料理をしなさい」と露骨に命じられる形だけで残るわけではありません。

 

「お母さんも大変だから手伝ってあげて」

「女性同士のほうがやりやすいから」

 

そんな一見ささいな言葉のなかにも、「誰が家事を担うのか」という無意識の前提が表れることがあります。

 

そして見落としてはいけないのは、家事を「嫁から夫へ移す」だけでは、親世代の母親が家事の中心を担う構図そのものは変わらないということです。

 

家事分担というと「誰がやるか」に目が向きがちですが、そもそも家事の量を減らす方法もあります。外食やオードブルを利用する、集まる側が費用を負担する、料理を持ち寄るなど、「もてなす側」の負担を減らす工夫も必要でしょう。

 

もちろん、家族の集まりで料理や片付けを誰かが担うこと自体が問題なのではありません。

 

問われるのは、その役割が「妻だから」「嫁だから」「母親だから」という理由で、話し合う前から特定の人に割り当てられていないかということです。

 

共働き世帯が珍しくなくなった今、見直すべきなのは日常の家事分担だけではありません。

 

実家に帰ったときに「誰が座り、誰が立っているのか」。そして、「そもそも誰か一人が立ち続けなければ成立しない集まりになっていないか」。

 

そんな何気ない家族の風景から、役割分担を見直していく必要があるのかもしれません。

 

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