総務省『労働力調査(2025年平均)』によると、定年後にあたる「60〜64歳」の就業率は74.9%に達し、「65〜69歳」でも54.5%と半数以上が就業しています。定年後も働く人が珍しくない一方、退職を境に夫婦の役割やお金に対する意識が変わることがあります。ある夫婦の事例から、その実態をみていきます。
「誰の稼ぎで暮らしてきたんだ」定年後、1日中パジャマ姿でテレビを占拠する「退職金2,200万円」の定年夫…58歳妻が机に置いた「2冊の貯金通帳」の中身 ※写真はイメージです/PIXTA

定年退職後、ダラダラしている夫

60歳で定年を迎えた高橋修一さん(60歳・仮名)。大手企業で35年間勤務。定年前の年収は約1,050万円でした。退職金は2,200万円。住宅ローンはすでに完済し、2人の子どもも独立しています。

 

夫婦2人なら、これまでの貯蓄もある。老後に対する不安はない――定年を機に会社を辞める決断をした理由です。

 

厚生労働省『令和7年 高年齢者雇用状況等報告』によると、企業の99.9%が65歳までの雇用確保措置を実施しています。同報告のデータでは、定年後に継続雇用を「希望しなかった(=仕事を辞めることを選んだ)」人はわずか6.6%にすぎず、9割以上が定年後も働き続けています。

 

一方、妻の美香さん(58歳・仮名)は、結婚後も家計を支えてきました。子どもが小さいころは専業主婦でしたが、下の子が小学校に上がってからはパート勤務。現在は週4日働き、月8万円ほどを得ています。

 

定年後、修一さんのライフスタイルは大きく変わりました。

 

現役時代、朝6時前に起きていたのが、8時過ぎまで寝ているようになりました。起きても着替えることなく、朝食をとり、そのままリビングでテレビを見ます。朝食が遅くても、お昼になるとお腹がすきます。昼食をとると、またテレビです。ひどいときには、美香さんが仕事から帰ってきても、修一さんはパジャマ姿のままということもありました。

 

「せめて、洗濯物くらい取り込んでくれない?」

 

そう頼むと、

 

「俺は35年間、働いてきたんだぞ」

 

返ってくるのは、そんな言葉でした。

 

家計にも変化が出ていました。定年前、夫婦の生活費は月30万円ほど。ところが退職後は、修一さんが昼食を外で済ませたり、ゴルフに出かけたりすることで、月35万円近くまで膨らみました。それでも退職金2,200万円がある――これが修一さんの安心材料でした。

 

「老後、何年あると思ってるの?」

 

美香さんがそう聞いても、修一さんは耳を貸さなかったといいます。