※写真はイメージです/PIXTA
実家でいつも動いている75歳母
恵美さんは東京都内で働く43歳の会社員です。一人娘で、実家は群馬県。比較的行き来しやすい距離ということもあり、ときどき両親のもとへ帰っています。
実家でいつも忙しく動いているのが、75歳の母です。もともと料理が好きで、台所仕事も苦にならないタイプ。娘が帰ってくるとなれば、「何食べたい?」とうれしそうに聞き、何品も料理を並べてくれます。
一方、78歳の父はというと、食卓に座ったまま。
「醤油取って」
「お茶もらえる?」
すぐ手を伸ばせば届きそうなものでも母に頼むことがあります。
「自分で取ればいいじゃん」
恵美さんが注意しても、母は「いいのよ、お父さんは昔からこうだから」と笑います。
母自身、家事をするのが嫌いなわけではありません。父にあれこれ世話を焼くことも、長年続いてきた夫婦の形なのでしょう。
そのため恵美さんも、以前はそれほど深刻に考えてはいませんでした。
「昭和のお父さんって、こんなものなのかなと思っていました」
しかし、最近になって少し見方が変わってきました。
「あれ? ちょっとやばいかも」父とコンビニに行って目撃した光景
ある日、父と2人で歩いて5分ほどのコンビニへ行くことになりました。父は「アイスを買ってあげるからな!」と嬉しそうに車の鍵を手にしました。
「え、こんな近いのに車で行くの?」
恵美さんが驚くと、父は「車のほうが早いだろ」と答えます。
「歩いて5分なんだから、歩いて行こうよ」
半ば強引に誘い、2人で歩いて向かうことにしました。そしてコンビニに着いた直後のことでした。
店内を歩いていた父が、床につまずいたのか、前につんのめるようによろけたのです。転倒こそしませんでしたが、恵美さんはヒヤッとしました。
「お父さん、やばいよ」
思わず、そんな言葉が口から出ました。
父は「ちょっとつまずいただけだよ」と笑いましたが、恵美さんには、どうしても「ちょっと」には思えませんでした。
振り返れば、父が日常生活で歩く姿をあまり見ません。近所への移動にも車を使う。家の中では母が身の回りのことをやってくれる。
「もしかして、お父さん、かなり動かなくなっているんじゃないか」
そこで恵美さんの頭に浮かんだのが、「フレイル」という言葉でした。