年収1,000万円近くありながら、重い住宅ローンや教育費に追われ、身を削って働き続ける40代会社員。「高年収=余裕ある暮らし」とは限らないのが現実。ある男性の事例から、高年収世帯が直面する苦悩と、働き方・家計のあり方を考えます。
「俺は何のために満員電車に乗っているんだろう…」〈年収960万円〉48歳課長、ローンと学費の重圧、〈小遣い月3万円〉の現実 ※写真はイメージです/PIXTA

「年収1,000万円近くあるのに…」と妻も困惑

家計を管理する由香利さんも、余裕があるとは感じていません。

 

毎月の住宅ローン13万円、長女への14万円、長男の5万円、生活費16万円。さらに通信費や保険料、車の維持費などがかかります。ボーナスが入れば固定資産税や住宅関連の支出、子どもの学費に充てるため、まとまった金額が残ることはありません。

 

高橋さんが「少しぐらい自分のために使いたい」と口にすると、妻から返ってくるのは決まって同じ言葉でした。

 

「年収1,000万円近くあるのよ。どうしてこんなにお金がないのかしら……」

 

責めるつもりはないのだと、由香利さんは話します。ただ、夫婦ともに「収入があるのに楽にならない」という感覚を抱えていました。そして、ある日の夜、高橋さんは妻にポツリと愚痴をこぼします。

 

「俺、いつまでこの働き方を続ければいいんだろう」

 

由香利さんは黙ったままでした。転職すれば収入が下がるかもしれません。かといって、今の会社に残れば健康を削り続けることになります。住宅ローンは残り13年。長女の卒業まであと3年、長男の大学進学は目前です。

 

高橋さんが「年収を下げてでも働き方を変える」という選択をできずにいるのには、そうした理由がありました。

 

できることといえば、家計の見直し。まず、長女の仕送りを含めた教育費は、卒業までにさらに数百万円必要です。長男についても、進学先によっては年間100万円を超える学費に加え、住居費などが発生します。

 

一方、住宅ローンは月13万円。金利上昇の影響も確認しながら、繰り上げ返済を急ぐより、当面は手元資金を残す方向で考えることにしました。

 

高橋さん自身も、会社での働き方を見直すことにしました。すぐに退職するのではありません。不要な残業を減らし、休日まで仕事を持ち帰る状態を少しずつ変えていく。そのうえで、50代以降の収入がどうなるのかを確認し、転職も選択肢に入れることにしたのです。

 

「年収1,000万円近くもらっている――他と比べて恵まれていることはわかっているし、辞めるなんてもったいないと思われるでしょう。でも、毎日4時間しか眠れず、月3万円の小遣いで何とか過ごして、それでも貯金が大きく増えない。これをあと10年続けることのほうが怖くなりました」

 

金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2025年)』によると、世帯主が40代の二人以上世帯で、老後の生活を「心配」とする割合は85.4%。老後のひと月当たり最低予想生活費は平均44万円、年金支給時に最低準備しておくべき金融資産残高は平均2,501万円となっています。

 

高橋さんの場合、世帯手取りは月50万円を超えています。それでも、住宅ローンと教育費を払いながら、老後資金まで十分に準備するのは簡単ではありません。

 

「年収1,000万円近くあれば、もっと余裕のある生活ができると思っていました」

 

家族の生活を維持するために働き続けながら、自分の体力や時間をどこまで犠牲にするのか――。48歳になったいま、その問題に向き合う時期に来ています。