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「今年は長いな」と感じた帰省
「お盆だから、少しくらい長くいてもいいよ」
そう言ったのは、東京都在住の佐々木和夫さん(仮名・66歳)、妻の洋子さん(仮名・65歳)。和夫さんは65歳まで会社員として働き、現在はパートとして週3日勤務。夫婦の年金収入は月28万円。給与を合わせると、毎月の手取りは約35万円になります。住宅ローンも完済し、老後の生活に大きな不安はありませんでした。
そんななか、38歳の次女・佐々木美穂さん(仮名)が2人の子どもを連れて帰ってきたのは8月上旬のこと。美穂さんは離婚しており、小学5年生の長男と小学2年生の長女を育てています。
「子どもたちの夏休みが終わるまで、少しお世話になってもいい?」
和夫さんは快諾しました。ところが、1週間が過ぎても、2週間が過ぎても、美穂さん親子は帰りません。その間、食費も増えました。夫婦2人なら月6万円ほどだった食費が、4人になると月10万円近くになりました。エアコンを使う時間も増え、水道光熱費も普段より月1万円ほど上がっています。それでも洋子さんは、娘に何も言いませんでした。
「孫が喜ぶなら、まあいいじゃない」と考えていたからです。
しかし、滞在3週間目に入ったころ、洋子さんの中に違和感が生まれます。美穂さんが、荷物を片づける様子を見せないのです。
ある日の夕食後、小学5年生の長男が突然、和夫さんに言いました。
「おじいちゃん、ずっとここにいたい!」
和夫さんは笑って答えました。
「夏休みが終わったら、学校があるだろう」
すると長男は、少し考えてから言いました。
「ママが、学校にはちゃんと行かせるから大丈夫って言ってた」
洋子さんが聞き返します。
「どういう意味?」
長男は悪びれることなく答えました。
「ママが、ここなら家賃いらないからって」
夫婦は顔を見合わせました。美穂さんを問いただすと、しばらく黙ったあと、ようやく口を開きました。
「……実は、もう部屋を解約した」
美穂さんによると、勤務先の業績悪化で昨年から収入が減り、今年に入って手取りが月24万円ほどまで落ち込んでいたとのことです。家賃は月11万円。子ども2人の教育費や食費もかかります。春ごろから貯金を取り崩して生活していましたが、7月末には残高が約18万円にまで減っていました。
「もう家賃を払えなかった。だから、ここに来れば何とかなると思った」
厚生労働省『令和3年度全国ひとり親世帯等調査』によると、母子世帯の平均年間収入(母自身の収入)は272万円(就労収入は236万円)。さらに、就業している母親のうち、パート・アルバイト等の非正規雇用が38.8%を占め、不安定な就労環境にあります。
美穂さんのように離婚(母子世帯になった理由の79.5%)を機に仕事と育児を一人で担い、家賃負担や予期せぬ収入減少から生活困窮に陥るケースは珍しくありません。実家へ身を寄せることが一時的なセーフティネットになります。