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挟み撃ちの苦悩と残された選択肢
穴埋めを余儀なくされたのは、管理職である山本さん本人でした。残されたメンバーだけでは業務が回らず、山本さんは自分の管理業務に加えて若手が残した実務を背負うことになりました。連日深夜2時まで残業を重ね、月当たりの時間外労働は80時間を超えました。
経営陣からは「部下の引き止めもできないのか」と責め立てられました。一方で、残った若手社員からは「課長が上のイエスマンだからこうなるんです。私たちを潰す気ですか」と陰で蔑まれました。
「自分はただ会社の方針に従ってきただけなのに、なぜここまで追い詰められないといけないのか」
事態を打開するため、山本さんはデータを取りまとめ、経営陣に直訴しました。完全出社による「静かな退職」の横行や離職率の上昇、採用コストの増加を定量的に示し、「ハイブリッド型リモート」の導入を提案したのです。
経営陣も相次ぐ離職と現場の停滞には危機感を抱き、「原則6割出社」となりました。これにより部下たちの過度な不満は和らぎ、さらなる離職の連鎖は防ぐことができたといいます。
ただ、一度去った優秀な人材が戻ってくるわけではありません。また完全リモートを前提に入社した若手から、完全に不満が消えたわけではありません。山本さんは今も、欠員が補充されないまま残業をこなす日々を送っているそうです。
会社と部下の板挟みになり、心身ともにすり減った経験は、山本さんの心に深い傷を残しました。高額な固定費を支払うために会社に依存せざるを得ない現実と、変化する世代間の価値観ギャップ。その双方の重圧に晒されながら、40代管理職の模索は続いています。
厚生労働省の前出の調査によると、過去1年間に自己都合で退職した若年労働者がいた事業所の割合は、山本さんの会社が属する「情報通信業」において47.5%に達し、全体平均(40.9%)を上回る深刻な定着難を示しています。また、内閣府男女共同参画局『仕事と生活の調和推進のための調査研究』では、正社員を辞めずに勤務し続けるために必要だったサポートとして、テレワーク等の「柔軟な勤務制度やその利用のしやすさ」を挙げる回答が57.8%で最多となりました。
多様で柔軟な働き方の整備は、単なる福利厚生の域を超え、優秀な若手人材の流出を防ぎ、組織の崩壊を回避するための必須の経営戦略といえそうです。