毎年お盆になると、家族で実家に帰省する人たちの姿をよく見かけます。とても微笑ましい光景ですが、帰省してきた家族を「出迎える側」は、いろいろと思うこともあるようです。島根県の実家に家族で里帰りをしている西尾玲子さん(仮名・42歳)の事例を見てみましょう。
「ばぁば、また来年ね~!」笑顔で孫を見送ったはずの65歳母から帰宅後にかかってきた〈恐怖のお盆電話〉 ※写真はイメージです/PIXTA

福岡の自宅に戻ると、母から〈まさかの電話〉が

3日目の朝、千代子さんが唯ちゃんと瀬菜ちゃんにポチ袋を渡しました。
 

「はいこれ。少ないけど、おもちゃでも買ってね」

 

ポチ袋の中には、小学3年生の唯ちゃんに5,000円、小学1年生の瀬菜ちゃんに3,000円のお盆玉が入っていました。2人とも「ばぁば、ありがとう~!」とうれしそうです。

 

千代子さん宅をあとにするとき、車の窓を開けて「ばぁば、またね~!」と手を振る唯ちゃん・瀬菜ちゃんに優しくほほ笑みながら、千代子さんは玲子さんたちの車が見えなくなるまで見送ってくれました。

 

「今年も楽しいお盆を過ごせたな」と思いながら車に揺られていた玲子さんですが、福岡の自宅に到着した2時間後、玲子さんの携帯に千代子さんから電話がかかってきました。

 

「もしもしお母さん? 今日はありがとうね、どうしたの?」

 

玲子さんが電話に出ると、千代子さんは「こちらこそ遠くからありがとう。――あのね……」と言いにくそうに切り出します。

 

「ずっと言おうか迷ってたんだけど、毎年お盆になるとあなたたちを出迎えてお盆玉まで上げてるんだから、仕送りくらいしてくれてもいいんじゃないかなって」

 

「月10万円」は、高齢者単身世帯の可処分所得を下回る

千代子さんの生活費は、老齢基礎年金と遺族年金を合わせて月12万円。手取りの金額もほぼ変わりません。

 

総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)」によると、65歳以上の高齢者単身無職世帯の可処分所得は11万8,465円です。千代子さんは月12万円の可処分所得があるため、これだけを見ると貯金を取り崩すほと生活に困るレベルではないように見えるかもしれません。

 

65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 -2025年-
出典:総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕 2025年(令和7年)65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 -2025年-」

 

しかし、玲子さん家族が帰省してきたときの食事代や孫へのお盆玉・お年玉などのお金を確保するために、千代子さんは月10万円で生活していると言います。

 

「私たちを迎えるために、お母さんが生活を切り詰めていたなんて……」

 

千代子さんに仕送りをしたい気持ちはやまやまですが、玲子さん家族にも余裕があるわけではありません。住宅ローンを毎月10万円返済しており、子どもたちの学資保険も月3万円払っています。玲子さんの夫は正社員として働いていますが、玲子さんは週3日・一日4時間のパート勤務。近くに子育てを頼れる人もいないため、子どもたちが小学校を卒業するまではフルタイムで働くのが難しい状況です。

 

申し訳なく思いながらも「今すぐの仕送りはできなさそう」と伝えると、千代子さんから「今まであなたにたくさんお金をかけてきたのに。習い事だってやらせてあげたし、私立の学校にも行かせてあげたのに」と小言を言われてしまいました。

 

そこで玲子さんは思わずムキになり、「それならもう来年から帰らないから安心して!」と返してしまったのです。

 

「お母さんの気持ちもわかるんです。でも、恩着せがましいことを言われてイラっとしてしまったんですよね……。しかも、帰省中はお母さんに負担をかけないように温泉代や外食費を私が払っていたのに、それに対しては何も思わないのかなって」

 

数週間後、玲子さんは旦那さんと話し合い、これから千代子さん宅にお世話になるときは、千代子さんに3万円を包んでもっていくことに決めました。お盆玉やお年玉をなしにしてもらうことも考えましたが、子どもたちの楽しみを奪いたくなかったと語ります。千代子さんとの間にわだかまりを残さないために、帰省のたびに現金を渡すのは解決策の一つなのかもしれません。