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発覚した隠蔽と家族の崩壊
健二さんは清さんの介護を理由に頻繁に実家に出入りし、清さんのキャッシュカードを使って生活費や住宅ローンの補填として現金を全額引き出していたのです。清さんは息子を不憫に思い、口座番号や暗証番号を教え、なすがままにさせていました。
「父が残したノートには、小さな字で『今日も健二にお金を渡した』とメモが残されていました。父は拒絶できなかったのだと思います」
智子さんは法的な措置を検討するため、弁護士に相談しました。しかし、生前に清さん本人の承諾のもとで引き出されていた場合、贈与とみなされる可能性が高く、生前贈与の持ち戻しや返還請求を成立させるのは困難であることが判明します。
親族間での不正な資金流出を防ぐには、出金通知の設定や限度額の引き下げといった物理的な対策に加え、早い段階で「家族信託」を活用し財産管理権を分離しておくことが有効でした。また、利用にあたってコストや制限等のリスクも伴う「成年後見制度」に安易に頼るのではなく、日頃から定期的に口座の動きを複数の親族で共有・確認し合える「透明性のある仕組み」を早期に作っておくことが不可欠だったのです。
最終的に、健二さんは「金はもう使ってしまって1円もない」と主張し、返還には一切応じませんでした。父が遺したはずの老後資金は影も形もなく消え去り、きょうだい間の信頼関係は完全に破綻しました。
遺品整理を終えた無人の実家で、智子さんはポツリと呟きました。
「お金がなくなったこと以上に、父の優しさが利用され、家族がバラバラになったことが悔しくてたまりません」
このように、身内が親の財産を勝手に使い込む行為は、社会的には「経済的虐待」と呼ばれる高齢者虐待の一種に分類されます。内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、養護者による高齢者虐待の加害者で最も多いのは「息子」で38.9%を占めています。
また、被害を受ける高齢者の73.5%が要介護認定を受けており、支援が必要な中で頼らざるを得ない親族から、密室で搾取が行われる構図が浮かび上がります。こうした悲劇を防ぐには、早期から家族信託や成年後見制度の活用を検討し、親族間で財産状況を共有できる透明性の高い管理体制を整えることが不可欠です。