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お金を出せば何を言ってもいい、わけではない
「もう翔太を家に連れていきません」
修一さんは意味が分かりませんでした。
「何を怒ってるんだ?」
電話をかけると、彩さんははっきりと言いました。
「援助をしてくれたことには感謝しています。ただ翔太は、援助してもらったから受験したんじゃありません。自分で受験を頑張りたいと言って頑張ったんです。お金を出したからといって、結果に対して『情けない』なんて……そんなこと言うなら、断ればよかった」
「お金を出したのだから、結果を求めて当然だろ」と修一さんが反論すると、「とにかく、翔太はもうお義父さんには会いたくないと言っているので。私も当分、伺いません」と電話は切れてしまいました。
修一さんは言葉を失いました。自分が140万円以上を負担したことも、孫のために使ったつもりだったことも、何の意味も持たないように感じたそうです。
このあと、長男を通して翔太くん、彩さんに対して「無神経だった」と謝罪したものの、「翔太が、お義父さんに会いたいと言うまで、私も伺うのは控えます」と彩さん。今なお2人とは断絶状態が続いています。
「本当に、本当に、翔太を傷つけるつもりはなかった。比べるつもりもなかったんです」
東京都教育委員会『令和6年度公立学校統計調査報告書』によると、都内公立小卒業生のうち私立中学への進学率は19.92%、さらに東京23区(区部)に限定すると25.04%、つまり「4人に1人」が私立中学に進学している計算になります。もはや都心部において中学受験はごく一般的な選択肢ですが、この「受験の日常化」こそが、子どもたちに過度なプレッシャーを与える要因にもなっています。
親や祖父母の期待を一身に背負い、小学生という多感な時期に膨大な勉強量と合否の重圧に晒されるなか、今回のように周囲から他者と比較されたり、結果を否定されたりすることは、子どもの自尊心を深く傷つける原因となり得ます。
内閣府『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』によると、日常生活で「子どもや孫などの将来」に不安を感じる人が29.7%に上りました。援助は祖父母の生きがいである「孫など家族との団らん(55.3%)」に繋がりますが、それを盾に子どもを傷つけては本末転倒です。「お金を出しても口は出さない」一線を画した見守り姿勢が、良好な関係を保つ鍵となりそうです。